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籠の中の乙女のinazumaのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
4.6
見事なまでに狂ってる…

『哀れなるものたち』が面白かったのでランティモス初期作品にウキウキで臨みましたが、想像以上に狂ってて最後までほぼドン引き状態での鑑賞となりました。この狂いっぷりと嫌悪感、ランティモス作品で一番ヤバいと思ってた『聖なる鹿殺し』を余裕で超えた。。

親父の狂った愛により自宅に監禁され、見た目はすっかり青年だけど、中身はキッズな兄弟姉妹たちがもう怖い。この姿で無垢であるがゆえの暴力性を描かれると精神的にキツい。名演でした。『哀れなるものたち』は見映えがランティモス作品らしくないと思っちゃってましたが、(ベラにも通じる)こういう歪んだ無垢の表現は初期からやってたんですね。

名演といえばイカレオヤジを演じたクリストス・ステルギオグル(名前もイカツい)は一見普通のエロオヤジに見えるところが超怖い。あの狂気の源は我が子への愛なのか、支配欲なのか、後者のような気もしましたが、あの恐ろしい表情からは結局何も読み取れず。
唐突なビデオ📼アタックには流石に笑ってしまった。あそこは完全にギャグでしょ。

それにしても雰囲気が素晴らしい。とにかく陰気。映ってるのは陽に照らされた清潔感ある豪邸なのに、とにかく陰湿極まりない、気持ち悪い。。
この陰湿な世界に『ロッキー』や『ジョーズ』の存在がチラッと顔を見せるのは異様だけど不思議な安心感もあります。

ドアタマの海は椅子、高速道路は風、うんたらかんたら言い出したときは、難解な映画なのかなと思いましたが、ランティモス作品の中で今のところ断トツで分かりやすい。2回観るとより楽しめます。
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