ある脚本家はパリに憧れている。彼が真夜中のパリで行きついた先は、彼の羨望の地1920年代のパリ。そこには名だたる芸術家がおり、彼はその夢のような世界に浸っていくが…、というヒューマンドラマ。物語、登場人物に加えパリの魅力がつまったどこか切なくも優しい作品。
以下ネタバレ感想を。
この作品は、「もしも夢が叶ったら…」のその先まで見させてくれているのもとてもいい。
結婚も仕事もあるのに、一方で夢への憧れが強くなる煮え切らない脚本家(そういう意味では芸術家というべきか)を巡る物語であるが、その人生観の移り変わりに加え、とにかく続々と登場する芸術家に目が離せない。
真夜中(ミッドナイト、午前0時)に唐突に現れる過去への自動車は何の説明もないが、そこがまたいい(笑)。寧ろそのおかげでこちらも深く考えず、過去の世界や人物に浸れたように思う。
タイムトリップものではあるが、個人的に今まで見てきたタイムトラベル系他作品の「現状を変えるために過去へ行く」のではなく、「過去へ行っていたら現状が変わった」という展開が他と異なり、とても新鮮だった。
もちろん知っている名前の芸術家が続々と現れるのだが、個人的には名前だけで深く知らない人たちも多く、「もっと知っていればもっと面白いんだろうなぁ」と何度も思った。それでも観賞中は一人で「おお!!」と何度も声が漏れた。
作品の中で芸術家が集う場面はとても面白く、ただ単純に「憧れの人たちと、実際にそこに生きている」という体感そのものに、その疑似体験にとても感動した。
個人的なことを言えば、「ビートルズが録音しているアビーロードスタジオ」や「トキワ壮の一間」に自分が入り込んだような、そんな没入体験と憧れへの広がりにとても胸が躍り膨らんだ。
パリは旅行で数度行ったことがあるのだが、歴史と景観のある街並みで、本当に映画のようなことが起きるかのように思わせてくれる場所だと思い出した。