1980年代のソウル、経済的に厳しいタクシー運転手が、高額の報酬を得られることを知り引き受けた客との関わりから展開される社会派作品。
私は当時の状況を本作にて知り、海外と本国、民族同士の対立、仕事の誇りなどあらゆる点から描いた社会派作品で、徐々に動く情勢と心理描写が巧みな素晴らしい作品であった。
以下ネタバレ感想を。
今作は序盤ではコメディタッチで飄々としたタクシー運転手が描かれる。
しかし徐々に一筋縄ではいかない社会情勢と絡み合い、己の誇りや安否等絡めあいながら話は動いていく。
軍部との対立では緊張感が鋭く、先の展開が読めない。加えて、各人物のそれぞれの使命や役割など、キャラクターの個性も立っているためとても胸が苦しくなっていく。
特に、催涙弾の煙の舞う軍部と民衆との衝突、通訳者の銃殺などまさに煙に撒かれるその状況でのシーンは非常に緊迫している。
加えて、記者として、運転手として自身の職務に遂行する様子、更に仲間のためを思うカーチェイスなど心理的な側面、社会的な側面、エンタメ的側面など多方面に巡らされた作品で、見終えた後にとても充実感があった。
今作であったような物語は決してエンタメ的と言ってはならない事柄ではあるが、それでもきっちり社会派エンタメとして視聴者に訴える今作は力作だったと思う。
ソン•ガンホのような「普通のおじさん」で名優である俳優はやはり見ていて非常に目を見張る。
