fonske0114

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのfonske0114のレビュー・感想・評価

3.0
世界的ベストセラー間違いなしのシリーズの新刊を、同時発売するために翻訳家たちに託すも事件が起こる、というミステリー。
多言語と翻訳家という中々見ない設定は新鮮だった。
特に本や文学、翻訳やミステリー、サスペンスに興味がある人向けでは。


以下ネタバレ感想を。


翻訳家たちが一同に翻訳する姿は非常に新鮮だったが、その翻訳の仕事ぶりを表す場面はほとんど出ない(飲んで遊んでだけ。個人的にはどう翻訳したかを相談し合ったり翻訳や作品への情熱を表すシーンが見たかった)。


加えて、犯人不明な序盤は「誰か?」と思わせるもテンポが悪く、時間が交錯し始めエリックとアレックスの掛け合いからの中盤はテンポは良いが先が読める。


そもそも、こういった事件の場合のキーは「この事件で誰が得をするのか」が王道。
となると出版を拒んだ本屋のあのおじいさんが関わることはその台詞から察せられる。

作者がアレックスというのも、いきなりのフランス滞在の過去、しかもいきなり大作を書いているしで後付けに見えてしまった。


目を見張ったのは本屋の主人の殺人を引き出した話術、ミステリーの作者が原稿強奪事件を立案というつながり。

他のトリックは結果だけ見せつけられるため、そもそもどうやって調べて仲間に口説いたのかも薄すぎた。


多言語が行き交うシーンは面白いものの、スペイン語や中国語が実は私も話せました、という突然の展開でイマイチはまれず。

しかもフランス語とスペイン語は似ている点があり、地域によってかそれぞれの言語で話しているにも関わらず、会話が成り立っていたのを見たことがある。その経験から、「フランス語話者でもスペイン語なら一部は理解できるのでは?」とも思ったし、いくら中国語とは言え、1 2 3のあの展開と言い方なら知らなくても想像しやすくなる。

ラストもその後を描ききれない結末は消化不良。


総じて今作は「トリックありき」でかつ、人物像は後で足した作品に見えて私には物足りなかった。


尚余談だが私は英語、フランス語、中国語に触れたことがあり翻訳の仕事もしたことがあるため、その点にフォーカスされた作品というのは懐かしさのようなものを思い出した。
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