モリユウキ

イディオッツのモリユウキのレビュー・感想・評価

イディオッツ(1998年製作の映画)
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正直に受け止めるなら偽悪的な作品だなと思った。
精神障碍者を演じる健常者を演じる俳優、みたいなメタ構造とか、そこに実際のダウン症患者を投入して俳優たちのアドリブを試してみたりとか。手持ちカメラ撮影による実在感やインタビューシーンを入れ込むことによってドキュメンタリー風を装ってるあたりもそうかもね。
ドグマ95における純潔の誓いは、過度な特殊効果やテクノロジーへの依存を拒否し、物語や役者の演技、そして主題といった映画本来の伝統的価値へと立ち返るために設けられているものらしい。
ハリウッド映画の空疎なスペクタクルと、自己満足へと堕していたアバンギャルド映画の双方に対するアンチテーゼであったとするならば、第三の道としてはありかもしれないが、果たしてこれが映画の純粋な要素で作られた映像なのだと言えるかは疑問。
カレンという純粋な心根の持ち主が、心に傷を負っても愚者になりきれず現実を見据える、という主題を一つ見出すことは出来るが、厳しい制約のもとに浮き出されるものがこの程度では過去の名作の方がよほど映画たる映画だと思ってしまうのですが...。理解が進むよう精進します。