♪ そう、微かにドアが開いた
僕はそこから抜け出すだろう
この狭い地下室では何かが狂っている
地味な立ち位置の作品だと思います。
現在の視点で捉えると既視感は強いし、公開当時も話題になった記憶はありません。
しかし、本作の劇場公開は2001年。
シャマラン監督の作品で例えるならば『シックス・センス』と『アンブレイカブル』しか存在しない頃に作られたわけで。それを考えると挑戦的かつ想像力に満ちた意欲作と捉えるべきでしょう。
しかも、本作を仕上げたビル・パクストンの本業は俳優(本作では主演も兼ねています)であり、これが初監督作品。いやぁ。それでこのクオリティはスゴイと思います。
何しろ『ユージュアル・サスペクツ』を彷彿させる“語り口”や、全体的に漂う居心地の悪さ。そして、思わず声を上げてしまう展開…どれもこれも見事なのです。
また、俳優さんの個性を引き出す手腕も本業ならでは。特にマシュー・マコノヒーの表情の変化は、本作の“見どころ”のひとつです。なるほど。目つきだけで色々と表現できるのですね。
ただ、筆致が丁寧過ぎるのは残念な限り。
折角の暴虐的で気味が悪い物語(バラバラ殺人の犯人を告発する…という興味深いオープニングから、その告発者の過去に至る展開)なのに背筋が寒くならないのです。
やはり、イカレた物語ならば。
イカレた筆致で観たいわけで。
初監督作品ゆえに配慮し過ぎたのかもしれませんね。
まあ、そんなわけで。
現代の視点で捉えると退屈かもしれませんが(逆に考えれば、現代人…というか僕が刺激に慣れただけなのかも。それって怖い)物語の背景を考えると評価すべき物語。邪道かもしれませんが、そんな立ち位置で捉えたほうが楽しめると思います。
なお、直接的な表現は少ないですが子供を虐待する場面がありますので…そういう展開が嫌いな人は避けたほうが良いです(映倫の区分はR-12)。