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UFO少年アブドラジャンのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

UFO少年アブドラジャン(1992年製作の映画)
3.5
[] 70点

年明け早々、ミハイル・ドローニン『The Second Wife』という凄まじいサイレント映画を観てしまってからというもの、ウズベキスタン映画史に取り憑かれてしまった。ということで、ウズベキスタン映画史に残るカルト映画を観ていく。すべてを知るナレーターによる紹介で、この前みた『E.T.』と同じことが起こったよとスピルバーグに伝える手紙のような体裁で展開されるUFO少年の珍騒動記(途中で出てくるけど『ストーカー』も観たらしい)。確かにめちゃくちゃ雑な骨格は『E.T.』に似ている…気もしないでもない。それもちゃんとウズベキスタンにローカライズされている。イスラム教の教義から客人として扱われる少年は、陽気な農民バザルバイに引き取られて、アブドラジャンと名付けられる。彼はバザルバイの金を物理的に増やしたり、徴兵された息子を遠隔召喚したり、住民たちを鍬で空を飛べるようにしたり、作物を大きくしたりと善意で様々な珍現象を巻き起こしていく。つまり、ローカライズとはイスラム教、コルホーズ、貧しさ、徴兵、労働の喜び、住民たちの結びつきなどである。この種の"のほほん"とした感じは、誰も悪い人間がいない不穏さから来ているようで、寧ろ恐ろしくもあり。若干プロパガンダの芳しい香りも。あと、決定的なシーンを映さないとかで色々予算を使わずにSFっぽいことを表現してんのかと思ったら、宇宙基地とか軍用ヘリとかバンバン出てきて、金の使い所~となるなど。途中、『トップガン』くらい戦闘機の発進シーン出てきたし、恐らく全面協力。

追記 2023.07.30
東欧映画スペースのウズベキスタン映画特集回で紹介した際、ノスタルジアがキーワードになるという話になった。となると、本作品のコルホーズ/住民たちの結束/労働の喜びみたいなものを賛美する傾向はそこに結びつくのか、となるなど。
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