イホウジン

お茶漬の味のイホウジンのレビュー・感想・評価

お茶漬の味(1952年製作の映画)
4.3
小津映画の重要なキーワードである「鈍感」に焦点を当てた作品。

この映画、とにかく夫の「鈍感さん」のキャラクターが愛おしい。謙虚さと人への優しさと妻への無償の愛情を持つ最高の男性である。妻との対比で際立つという面もあるが、とはいえ小津映画の中でも有数の「いい人」であるのは間違いない。
ストーリーは「晩春」の続きのような捉え方もできる。晩春ではお見合い結婚をするかしないかの攻防だったが、こちらではお見合い結婚後、いかにして愛を育むかを中心に描いている。夫婦の対比関係が鮮明で善悪もややハッキリしているので、小津映画の中ではコメディ路線が珍しく強い印象がある。
「違いを受け入れる」という映画全体のメッセージや夫婦の子供がいない設定,海外出張など、話の内容はとても現代的である。ここでは不寛容な立場を取ったのは妻であったが、“亭主関白”とかいうワードがあった以上これは「観客の皆さんは結婚して愛を育めているか?」という問いを暗示していたように思える。
映像も言わずもがな見事。他作よりもカメラの動きが多かった気もする。襖を使った一点透視図法がいつになく映えている。

リアリティの一方で幻想的な演出がなされる作品を多く作る監督の割には、少し浮世離れしたポップさが良くも悪くもあったことは否めない。
イホウジン

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