nt708

危険がいっぱいのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

危険がいっぱい(1964年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

どこから語ったらよいだろうか。ストーリー、演出、演技、、作品を通して実に総合点が高く、見ごたえのある90数分だった。恐らく、何よりも語られるべきは「恋は狂気と紙一重」ということである。自分の恋するマルクがギャングに追われていること。同時に屋敷の女主人とその恋人が彼を殺そうとしていること。これらをうまく利用し、自分の手を汚さずに自分の恋を成就させる。ある意味、本作で一番恐ろしい存在は彼女だったのかもしれない。マルクが隠し部屋に押し込められたことは、この物語がもう一度起こる予感を起こさせ、それがまた観客に恐怖となって押し寄せてくるのである。ミステリーとして、スリラーとして、あるいはラブロマンスとして秀作と言うほかないだろう。

演出もフランス映画らしく、実に洒落ている。音楽によって作り出されるムード。ムードと呼応するかのように観客の心を惑わせる鏡の演出。鏡に映るヒロインたちの目は光に輝き、モノクロとは思えない色艶を漂わせている。こういう撮り方は他の国の映画ではなかなか観られないし、真似しようと思っても容易ならない代物である。

こういうギャングものと銘打った映画は、もともと苦手な部類なのだが、本作はあくまでラブロマンスに主軸があることで極端な拒否反応を示すことなく観切ることができた。こういう洒落た映画をどうやったら作ることができるのか、何がそうさせているのか、研究の余地がありそうだ。
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