TaKeiteaZy

ダンサー・イン・ザ・ダークのTaKeiteaZyのレビュー・感想・評価

4.3
移民のセルマは一児の母で、工場で働きつつ、大好きなミュージカルの舞台の稽古にも精を出す。彼女は目の病気で視力を徐々に失いつつあり、それは息子にも確実に遺伝している。その息子の手術費を苦しい生活の中どうにか工面して、息子の未来に照らしたかった。だけなのに。ただそれだけなのに。な話。

「ちょ、おま、まだ観てなかったのかよ」シリーズ第二弾。

噂は聞いていたのである程度覚悟はしていたのですが、これは、いけない。正直あってはならぬものだ。つまらない、とか胸糞、とかそういう類ではおさまりきれないものが生まれてしまっていたんだな、と。

邪推ではあるが(順序は逆だけど同監督の別作品「ハウス・ジャック・ビルト」は見たので)、ただ悪戯に絶望と悲しみをオモチャみたいに組み立てて、それを客寄せパンダにしたつもりだとしたならば、最大のミスは主演がビョークだったことだ。製作の発端がどっちだったのか、作品があってビョークなのか、ビョークがいてこの作品だったのか。それは判らなくて良いこととして。ビョークでなければ、下手すると何一つ人の心に残るものはなく、ただ悪趣味な作品で終わっていたと思う。ミュージカル風な演出も、完璧な悪意とも捉えかねない。

見終わった後、確実に全ての欲が失せてしまい、喉元が詰まったような違和感と重みが取れない。これは脚本がストーリーが、とかではなくこの感覚はあのビョークの演技と存在が俺たちに与えたものだと思う。

主演によって、めちゃくちゃに美しい凶器と化した映画。

なんかさあ、藤田和日郎先生作「月光条例」みたいにさあ、映画世界の垣根を超えてキャラが乱れ総出演するなんかがあって、アヴェンジャーズとかデロリアンに乗ったマーティとかがセルマを助けに来ねえかなあ、誰かそういうのを作ってよ、作ってくれよ。

そういうことでものたまって薄めていかないと、この作品は人の心を数日「持っていく」ね。大変危険です。
TaKeiteaZy

TaKeiteaZy