tanayuki

ダンサー・イン・ザ・ダークのtanayukiのレビュー・感想・評価

4.8
あまりに絶望的な幕切れに、もう一度見るのをずっと躊躇してた映画。やっと見る気になった。手持ちカメラの揺れる画面に酔う。工場の機械音がミュージカルにつながり、セルマの妄想が爆発する。鉄道のシーンでセルマが歌う「アイヴ・シーン・イット・オール」に心を鷲掴みにされる。

キャシー(カトリーヌ・ドヌーヴ)やジェフ(ピーター・ストーメア)をはじめ、セルマにはよくしてくれる味方が何人もいるのに、息子ジーンだけのために生きるセルマには届かない。心を閉ざしたセルマは妄想の中でしか自由になれない。妄想シーンが明るく愉快であるほど、セルマの孤独と救いのなさが際立つ。

やがて妄想がセルマを飲み込み、何が現実なのか、見る者にも見分けがつかなくなる。あの弁護士は、あのシーンは、あのメガネははたして本物なのか。願望にすぎなかったのではないか。そんな疑念が付き纏う。

セルマの視線が宙を舞い、セルマに憑依したビョークの演技が冴え渡る。そして、あのラスト。ミュージカルには悲しいシーンがないって言ってたじゃんか……(嗚咽

△2020/04/18 Apple TVで2回目鑑賞。スコア4.8
△2016/05/29 iTunes登録。スコア4.4
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