かなり悪いオヤジ

悪い種子(たね)のかなり悪いオヤジのレビュー・感想・評価

悪い種子(たね)(1956年製作の映画)
4.0
8歳になるまでにこの少女ローダ(パティ・マコーマック)は、一体何人の人間をその手で殺めたのだろうか。その残忍さは少年時代のダミアンやあの貞子をもしのぐ完全無欠のサイコパスなのだ。しかも何も知らない大人たちの前では超ネコをかぶったいいこちゃんブリッコ、ひそかにローダの正体を見破っている一見トッポそうな掃除人リロイと2人きりになるや、あのエスターもびっくりの豹変ぶりを見せるのである。


おそらくこの映画、ガキんちょサイコキラーを主人公にしているという意味では、現在公開中の(クネクネダンスがなかなか真似できない)『MEGAN』や『チャッキー・シリーズ』なんかにもきっと影響を与えているに違いない。パッツンパッツンのブロンド三つ編みヘアの笑顔に隠された(グレタさんの目付きに似ている)邪悪な素顔。とうとう事件が起こるたびに娘のことを疑い出した善良な母親クリスティーン(ナンシー・ケリー)に抱きついて、「私美人のマミーのことが大好き💕」とその場を誤魔化すローダのざーとらしい演技がとにかく秀逸なのである。


元々舞台を想定した原作小説を映画化したせいだろうか、モニカという大家が近くに住んでいるアパートの部屋からほとんどカメラは動かない。基本的に閉塞感バリバリの救いのないスリラーにも関わらず、どこか明るさを感じる不思議な魅力をたたえているのだ。その明かりとりの穴を開けている一人が、アパートの掃除人リロイを演じているヘンリー・ジョーンズなのである。大人たちのいないところで少女ローダを(幼児性愛抜きで)からかっているつもりが、真相を思わず言い当ててしまう切れ者リロイは、本作もう一人の二重人格者。


その対局に位置するのが、ローダを自分の娘にしたいほど可愛がっている大家のモニカであり、出張がちで家を開けることが多い鈍感を絵に描いたような軍人の父さんなのである。逆に、担任の先生や一人息子をキャンプ中の事故で失ったアル中オバサンが薄々ローダを怪しんでいることを不審に思い、自らの出生の秘密を父親に確かめたクリスティーンはついに確信するのである。ローダが一連の殺人事件の真犯人だと。


かくなる上は月にかわってお尻ペンペンよ!なんてラストもありかなぁーと思ったあなたは、エンドロールの前に思いがけないホッコリプレゼントをもらえるので、なんでも欲しがったローダのようにけっして最後まで諦めてはいけませんよ。しかしこの地獄天使ローダ、まさか天の神様からも思いがけないプレゼントをもらっちゃうとは、欲張りにもほどがあるっつぅことっすかね。おっとこれはネタバレ禁止でしたね。