とても悲しい……イギリスは二次大戦においての戦勝国であり、勝利した戦争を経験した世代である二人にとって、戦争の記憶は「古き良き思い出」。
60代前後くらいと思われる夫婦を中心に、物語は彼らの家の中と庭という狭い範囲で展開する。あの年齢で、新しい価値観を身につけることは難しく、そうした背景を踏まえると、国が何とかしてくれるだろう、イギリスは負けるわけがないというジムの考え方も理解できてしまうのが悲しい。
ヒルダは政治よりも自分の家庭内を美しく保ち、日常を続けることを重視していて、これもこの当時・世代の女性としては一般的な価値観だったのではないかと思える。
家がボロボロになっても「明日誰々の店に行こう」とあくまで日常を続けようと励まし合う二人が痛々しい。希望を持とう、ポジティブに考えようと励まし合う姿勢と、正常性バイアスとで、外に出て助けを求めようとしない二人。
デビット・ボウイの歌う主題歌も作品にハマっていて美しい。
実写と組み合わされたアニメは、不思議な雰囲気で見応えがあった。