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チェイサーのbuchikenのレビュー・感想・評価

チェイサー(2008年製作の映画)
3.8
なかなか良い🙂

早く早く急いでーっ!を推進力にしつつ、犯人の住所を特定するまでの単純なお話を、核心をわざと外しながら延々と物語は進む。
いくらなんでも警察無能過ぎやしませんか?
と思いきや、モデルになったユ・ヨンチョル
による連続殺人事件では、警察の取調べ室から一度逃げられているので、割と近い感じかもしれないのが、なんとも辛い。
ポン・ジュノ監督「殺人の追憶」でも警察の無能ぶりが描かれていましたが、その事件(1980年代)から20年経って進歩したのは、警察が暴力をふるわなくなったのとビデオ撮影するところですね。
とはいえ劇中では、ビデオ撮影止めたり元刑事が犯人をボコボコにするのを、見て見ぬふりをしますが😅
まあそこはフィクションなので。
劇中での捜査方法でよくある聞き込みが無いし、あの車を調べてもいないというのが、見ていて何かが足りない感じを常に醸しています。
それなので、見ていてじれったいたらなかった。

描写がやや過剰で尺も長いので、追跡シーンやアクションシーンはちょっと疲れを感じます。
また血が多目で、あまりにも生々し過ぎる為か白黒になったりした場面もありましたが、白黒は唐突だし全体の統一感を損なうので、それならばシルエットだけにするとかの方がいい。
ただ映像は暗い所はしっかり暗いし汚い所はしっかり汚いので、とても良いと思います。

私は「コクソン」を最初に見ているので、ナ・ホンジンはキリスト教に対して不信感を持っているような気がしました。
劇中何度も十字架が出てきますが、全く無意味な存在として機能していると思いますし、犯人の執拗なノミによる殺害もキリストの磔を想起させます。
キリストは磔になっても何も救えていないじゃないか?ということなんでしょう。
このあたりのサブテキスト的なところは、作品に深みを与えていて、数多あるサイコキラー物とは一味違っています。

もう一つの特徴は、“意地悪”ですね。
これは説明出来ないので、見て感じてもらうしかなさそうですが、私は結構好きです。

それにしても、これが長編デビュー作なんだから大したものです。

追伸、監督はクリスチャンだそうなので、神に対する不信というよりも、願いや疑問といったところなのかもしれません。
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