こたつむり

チェイサーのこたつむりのレビュー・感想・評価

チェイサー(2008年製作の映画)
4.1
♪ ピリオドの雨の色
  赤く濁ったジェラシーの色

“闇”に真正面から向かい合った作品でした。
サイコパスの犯罪を描いていますが、確実に“一線”を超えているので、犯人の心情が理解できません。これが本当の底知れぬ闇。光すらも吸収されてしまうのです。

いやぁ。本当に韓国映画ってヤヴァイですね。
理屈よりも感情が優先される国民性だからか、映画に対する姿勢も容赦がありません。常に“覚悟”を求められる社会だからでしょうか。ぬるま湯の日本では作れない作品だと思います。

そして、その攻撃性は自国にも向くわけで。
本作で言えば、思い込みだけで逮捕し、自分たちの都合だけで容疑者を解放する国家権力(警察)が対象。勿論、日本でも冤罪事件はありますけどね。ここまで杜撰ではないと思います(たぶん)。

確かに映画はフィクションです。
でも、その根底には“国固有の文化”が流れているわけで。デフォルメ(脚色)かもしれませんが、本作のような断面もある…と捉えた方が自然だと思います。

また、本作は実際の事件を下敷きにしていますが、実際の被害者数は20人だとか。やはり、二桁になると凄みが違いますね。言葉を失う…というのは、こういう気持ちなのかな。エグいわあ。

ただ、本作の救いは主人公の変化。
自分の都合と感情で突っ走る系統の人物ですが、感情の奥深くに“何か”が灯り、その熱がじわりと伝わってくる…その熱さだけで最後まで観ることができました。

やはり、韓国は近くて遠い国。
だけど、闇に立ち向かう姿を“先入観なし”に受け止めることができれば…もしかしたら、日本と韓国が理解し合う“きっかけ”になるかも…。かなり、猟奇的な作品ですし、後味が悪いですが…。

まあ、そんなわけで。
ニンニクのように強烈で臭いもキツイ作品。
でも、その味は人を虜にし、バイタリティを与えてくれます。勿論、刺激物ですからね。取り扱いは注意。胃腸が弱っているときに摂取するのは厳禁だと思います。
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