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ルル・オン・ザ・ブリッジの継のレビュー・感想・評価

ルル・オン・ザ・ブリッジ(1998年製作の映画)
4.3
ライヴ中, 凶弾に倒れたサックス奏者・イジー(カイテル)。
何とか一命は取り留めたが, 片肺を摘出し演奏が出来なくなった彼は絶望から立ち直れない。。

『スモーク('95)』等の原作/脚本家ポール・オースターが, 今作では図らずも監督も担当。
理不尽なまでに都合良く・或いは逆に何事も上手くいかないイジーの物語はちょっとした仕掛けのある構成になっていて, 観てるコチラは頭の中で改めてストーリーを再構築することになります。

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 ー青い光を放つ「石」の、幻想的な力。
初めて観た時, 青い光が画面のみならず部屋中を照らすような感覚に陥って, “うわぁ…”って感動した記憶が。
それは仕事帰りの疲労感とアルコールがもたらす幻惑だったのかもしれないwwけど, 映画としてオースターが表現したかったのは或いは文筆業で表現し難いこうした視覚にダイレクトに訴えるものだったのかも?なんて思ったりも。

 ー被弾する前にイジーが「見た」もの、「聞いた」こと。
本人の意志とは無関係に男を惑わせ, 運命を左右するファム・ファタール(=運命の女), ルル。
実際にはあのタイミングでXXXとすれ違うだけの彼女を, 確かにイジーは(ボブカットが印象的なルイズ・ブルックスと同じタイミングで)見ていたわけで。

イジーが「出逢う」のがオカッパのブルックスじゃなく, 更に元妻(ガーション)でもなく, 現代的な若い娘セリア(ソルヴィーノ)なのは男として共感(笑)
あぁした時って案外あんなカンジで, 近々の記憶の断片が本能的に結合してしまうのかもしれない‥なんてww.

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…ネタバレを避けて書くと奥歯にモノが挟まったようで歯痒い😹
構成自体は取り立てて珍しいモノじゃないし, 表現としてもう少し…って思う描写もあって, ヴェンダースならどう撮ったろうなんて思いがよぎる箇所もチラホラ。
『スモーク』のような万人に好まれるタイプではないけれど, 文筆家であるオースターが映画として「映像」化したかったのは分かる気がしました。

ルルの映画を撮ろうとする監督役が, ウーマンリブで名を馳せたレッドグレイヴというのが面白くて「ルルは女のセクシャリティの化身…」なんてこのヒトに諭すように言われると説得力が半端ない。
イジーがこの監督のファンだという設定は, 今作の仕掛けを透かし見るようでもあって, その知的な発言は本作の世界観を補足する含蓄のあるものでした。

映画『雨に唄えば』でイジーと意気投合するデフォーが, “♬I'm si~nging in the rain…” と口ずさみステップを踏むのが楽しくて(^^)、役柄に沿うエピソードをもっと観たかった気はするけど, そうすると色々支障をきたす(^o^; ,難しい役どころ。役割をもう少し掘り下げて欲しかったなぁと, 観る度に思います。

高スコアなのは個人的に思い入れが強いから。好き:嫌いは3:7くらいに分が悪そうなのでオススメはしません(笑)。
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