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余命のlunesのレビュー・感想・評価

余命(2008年製作の映画)
3.2
乳ガンは女性にとって、最も恐ろしい病気の一つだろう。組織として乳房を失うだけ無く、女性としての尊厳さえ失ったと考えることもできるからだ。

松雪泰子演じる滴は、妊娠と乳ガン再発という極限の状態に追い込まれる。
出産に向けた準備と並行して、ガン治療を行うのは、母子共に大きなリスクを背負うことになるからだ。
この状況をさらに難しくさせるのが、再発したガンに根治の見込みが無いということ。
つまり、滴には間違いなく死が待っている。

人としての倫理観、女性または母親としての生き方を問う場面が多く見られる。
もちろん男女にかかわらず、自分に置き換えてみた時、果たしてどれだけ心を強く保っていられるか考えさせられる内容である。

死を前にして、滴がとる行動は実に具体的かつ合理的だ。
特に椎名桔平演じる夫とのくだりが顕著。
この夫はイイ夫だが少し頼り無く、不安定な収入のカメラマンで経済的には滴に依存している
後半、彼女は夫を突き放すのだが、それは『ある事』へ繋がっている。
賛否両論あるだろうが、この選択も無くはないハズ。
母性というのはきっとそういうものなんだろうし、残される者への愛情だろう。

全編に渡って描写はとても穏やか。
女性目線の作品らしくゆったりしたテンポだが、テーマの割にはおとなしくて、上品すぎる。これだけで130分超えは長い。
出産と病が両天秤にかけられた状況では、もっと感情がむき出しになったり、狼狽えたりするものではないだろうか?
良い意味での荒々しさが少し足りない。

今作は評価が難しいタイプの映画だろうと思う。
年齢、性別、既婚、未婚、出産経験の有無等で作品の感じ方が全く違ってくる。
(2010/7/23)
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