回想シーンでご飯3杯いける

素晴らしき哉、人生!の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

素晴らしき哉、人生!(1946年製作の映画)
4.8
ドラマ「ブラッシュアップライフ」を観終わった後、真っ先に観たくなったのが本作だった。というわけで久々に再鑑賞した。

「或る夜の出来事」で知られるフランク・キャプラによる1946年の作品で、幼い弟を事故から守った結果、片耳の聴力を失ってしまった男が主人公。救われた弟が華々しい人生を送る一方で、兄である主人公は、全てに於いて他人を陰で支える苦労人として生きている。

とある事件がきっかけで窮地に立たされた主人公は自殺を思い立つ。その前に現れたのは、ちょっと冴えない天使、というか、姿格好は普通のオジサンである。

人生の「if」(もしも)を描く中で、1人の人間がどれだけ多くの人の人生に関わってきたかを明らかにしていく、優しさに満ちた人生讃歌で、本作から影響を受けた作品も多い。有名なところではニコラス・ケイジ主演の「天使のくれた時間」が、この「素晴らしき~」をモチーフにしているし、スティーヴン・スピルバーグは最も影響を受けた映画である事を公言し、彼が製作総指揮として携わった「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にはそれが色濃く表れている。

日本では森絵都の小説でアニメ化された「カラフル」、是枝裕和の初期作品「ワンダフルライフ」の設定にも影響を読み取る事が出来る。

そして「ブラッシュアップライフ」である。バカリズムが演じる、ちょっととぼけた感じの案内人は、「素晴らしき~」の天使を思い起こさせる。人生をドラマティックに描くのではなく、さりげない毎日のやりとりや繰り返しにこそが人生で最も大切なものであるという描き方も「素晴らしき~」と共通する。

80年前の映画なので、さすがに粗削りに感じる部分もあるが、本作の存在こそが、映画界の「if」を体現し、後世の作者に大きな影響を与えたという点でも、とても重要な作品だと思う。現実とは違う、もうひとつの世界を見せてくれる。人間が持つ想像力の素晴らしさ。