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二人で歩いた幾春秋のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

二人で歩いた幾春秋(1962年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

どうも木下恵介の映画は苦手だ。特に喜劇をやろうとすると嫌らしさが気になって作品に集中できない。しかし、『二十四の瞳』をはじめ本作のような人間ドラマをやらせるとなかなか良い作品を作るようである。無理して笑いを生み出そうとしなくても、登場人物の日常を描くだけで充分コメディカルなシーンになっているのだ。

本作は貧しい暮らしながらも息子を少しでも幸せにしようと奮闘する父と母の話。長年一緒にいれば喧嘩も絶えないが、ふとした瞬間に見せる阿吽の呼吸は円満な夫婦であることを象徴しているようである。暮らし向きは厳しいが、両親と息子の関係も良好で、お互いがお互いの幸せを願って日々奮闘している。それだけに物事が上手くいかなくなると傍から見ていて胸が締め付けられる思いがするのだ。

恐らく今後も彼らには苦しい毎日がやってくるのだろう。クライマックスの台詞にもあったように、これからが勝負である。しかし、そのような苦しい毎日の中にある微かな幸せを噛みしめながら彼らには前を向いて生きていってほしい。そんな希望を観客に抱かせてくれる良作だった。
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