☑️『Q&A』及び『暗戦 デッドエンド』▶️▶️
似てるかなと思い・借りたら、まるで力点の置き方違う、組織犯罪に関する(米香の)二本。
重々しくてぶつ切りのような釈然としないタッチ、内容も社会の腐敗と個人の行き詰まりがとめどない救いのなさの一本と、軽快で巧み・鮮やかなスタイルと、茶目っ気・爽快感が、滞り濁った組織・社会システムに一瞬心地いい風穴を空けるもう一本。新旧犯罪物の対照的味わい、時代や地域の違いと云うには共に’90年代の作。老境に入った作家の溜まったダークさの開放と、どちらかというと新鋭期で、未来に可能性や明るさを直感できる・差異と見た方がいいのか(事実、さほど詳しくないが、21世紀に入っての後の方の作家の作風には、過剰な退廃の耽美性・関係や感情の軋轢や苦悩・即物的残虐が、急速に増して、映画的によりワクワクはするが、半ば様式が目的化してるところがある気もする)。
NY市警から地検へ転身・出世。単なる警察官の・凶悪麻薬ディーラーに対する正当防衛射殺に、その新進地方検事補への初仕事の祝儀的指名の筈が、尋問調書を作る中、目撃証言・弾道調査による銃口径から、意図的・一方的殺人の可能性が出てくる。突き進む検事補の、自分の嘗ての恋で相手に与えた傷、誇れる殉職した模範警官だった父の実態の問題も浮き上がりも出てくる中、(白いのも)黒人・(キューバからも)ユダヤ・(今上層も元はチンピラ)アイリッシュらへの人種・民族差別構造、とりわけその中でもマフィアのイタリア人・手先から対抗のプエルトリコ人組織の力関係・軋轢と警察の癒着or潰し、現在直属上司で次期検事総長目指す殺人課課長の、下は上記2勢力と関係し・手駒の現疑惑警察官使って・上はワシントン政界(知事戦等)と繋がっての成上がりの暗部構造、上から下まで染まり渡りきってる収賄汚職(上は公然、下は姑息共謀)、までが絡み合いながら解れず泥沼的に現れてくる。しかし、警察・検察に於いても、裏切り御法度の仲間内の忠誠が一義とされ、問題とするには大きすぎる(自らも係わってる)繋がりが引き出すは叶わず・隠し通すに全て(信頼の旧上司まで)が染まりきってることが分かってくる。外されても、闘いを諦めず・(公私の)自分を問いつめてく姿勢を固める検事補。
映画としてスッキリしない、しかし、このゴツゴツした感触・呼び掛けは貴重だ、というかこっちの側に引き入れるべき何かを示し出す。粗め・汚れめのリアルトーンに、赤や青の照明が人為としてははたらく。CUからL等、ショット間にナタをおろした断絶・段差の様な滑らかさの拒否があり、構図も角度や奥行きに力がある。パン以上に回り込むような、リバース中の互いに寄る、またはフォローでも、ゆっくりも重いカメラ移動は機能性や説明・情感を逸脱している。音楽もぶっきらぼうにカブる。
じつは本作は過去、20数年前レンタルVHSでしか観ていない。しかし、これを観て初めてこの作家を端倪すべからざる存在と分かった。それまで、スクリーンで観た『ネットワーク』も『プリンス~』も必ずしも高い評価に結びついていなかった。今回ルメットのサイクルを思い(10年くらい前録画したディスクを探すのも面倒で、レンタル品で)見直して、原作等あるとしても、ルメット自ら書いた本はやはり力があると確認した、うまくはなく、安易に纏めずラストもぶつ切りだけど、真情が真っ当過ぎる位にこもっている。グロさと力の矢印の内包は、完全には閉じていない。そういう面では理解が遅い、自分の鑑識眼もまた実感す。スピルバーグも、日本上陸四半世紀経って、『~ライアン』でようやく注目すべき存在と知った。
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その点、若き?杜作品は、スマートで心地いい。あらゆる自在なアングルとカメラワーク、コマスピードの可変、キャラや仕掛けの明解さ、暗黒社会を扱っても、へんなシコリが残らない。余命短いその社会のアウトサイダーが、美女との出会い含め楽しみながら、社会や警察を手玉に取り、亡き父の怨念はらすべく、その対象の組織から・ひと泡もふた泡も吹かせ、(大宝石と)大金を巻き上げ、下層の人らと彼女に提供してく。警察組織をはみ出て、指名され・呼応する刑事の味もいい。
ただ、まだこの頃は画調への拘り少でひたすらスマートに留まってて、何よりもアンディ・ラウの変装の、敵のTOPや父に扮した老人はまだしも、女装は画面内人物らは騙せても観客の我々には冗談にしか見えない。千恵蔵の伴内を思いだし、興醒めだった。釈然としない、半端な趣味的な細部の着想が結構多い。