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リリイ・シュシュのすべてのぴのしたのレビュー・感想・評価

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)
3.9
岩井俊二の映像美がないとかなりしんどい(というかあってもしんどい)スーパー鬱映画。

中二感のある世界観を持ったカリスマ歌手、リリィ・シュシュに傾倒する中学生が主人公。いじめにあい、灰色の学校生活を送る主人公はリリィシュシュと、リリィファンの掲示板に生きる道を見出す。いじめっ子になってしまった親友、不良たちに援交を強制させられる女子、そして主人公が思いを寄せる久野さん。。

この映画は中学で起きる悪質ないじめを描きつつ、その裏にある中学生たちの苦悩と一言で表せない複雑でリアルな感情を表現しているように思える。

何と言っても、最後の担任のクソみたいな個別面談が象徴的だった。大人は何もわかってくれない、という。誰も見ていないところで子供たちは傷ついて傷ついて、想像以上にひどい現実を前に、それを整理して口にする言葉もない。先生の口にする「悩みとかあるの?」の軽さよ。「悩み」みたいなわかりやすい言葉で表せるような感情じゃねーよ、バカって言いたくなる。

あと、劇中にずっとネット掲示板の投稿が現実の場面に上書きされて出てくるのも、現実にネット世界が重なる感があっていい。

あとリリィシュシュの浮遊感のある音楽・ドビュッシーの清らかで透明感のある音楽が綺麗な映像とマッチしているのもいい。映し出されるエゲツないシーンとの対比も逆にいい。

この映画の特徴でもある、中二感のあるネット掲示板の書き込みが、中学生たちの心情にリアリティを与えているのかも。客観的に見たら大げさでバカみたいな中二用語でも、実は中学生たちの複雑で苦悩に満ちた心情を吐露するにはそれくらいがちょうどいいのかもしれない。ここまで酷くはなかったけど、死ぬほど辛かった自分の中学生時代を思い出す。

内容は難しいけど、この辛い雰囲気と映像美、音楽のマッチを楽しめたら十分面白いと言える映画。