鶏肉

スラムドッグ$ミリオネアの鶏肉のネタバレレビュー・内容・結末

スラムドッグ$ミリオネア(2008年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

スラムで育ったサリームとジャマールは暴動で母を殺されてしまう。ゴミ漁りやトイレのチップなどで日銭を稼いでいたところママンに囲われ組織的物乞いビジネスに利用される。歌が上手いが故に目を潰された子供を目撃したサリームはジャマールと共にママンの元から逃げ出し、電車での物売り、観光地ガイドや盗んだ靴の販売など知恵を絞って逞しく生きてゆく。サリームはついにママンの殺害を果たすがその手下の影に怯え、より強大なマフィアの庇護下で悪の道に転落してゆく。ジャマールはコールセンターのチャイワラ(お茶係? そんな仕事があるのか)として働きながらママンの元から救えなかったラティカにずっと思いを寄せている。
現在ジャマールはクイズ番組で正解を重ねたが為に詐欺を疑われ警察の取り調べを受けており、それぞれのクイズにまつわるエピソードがこの半生と絡めて語られてゆく。
サリームはジャマールが大好きなアミターブ・バッチャン(この人は実によく「スーパースター」として色々な映画で取り上げられている)のサインをわずかなカネのために売ってしまったり、ラティカを匿うと見つかるからと合流を拒否したり、ママンから逃げ出す際には見捨ててしまったりなど子供時代から性根悪く描かれている。細かい所では食堂での勤務時にミネラルウォーターを水道水でごまかす様子などもあり(これは流石に本人の意図ではなく「そういう店」なんだろうが)、最終的に札束風呂の中で制裁を受ける。ミリオネアに出演しているジャマールは本当に回答がわからない最後の問題を「運」で正解し大金を手にした瞬間インド全土が熱狂する。ママンから逃れる列車にいた大人たちの生気のない眼差しがどん底からは抜け出せないと諦めているようで、多くの国民がそんな状況にあるとするなら、スラム出身のジャマールをインド版みのさんのようにバカにする人よりも応援する人の方がきっと圧倒的に多いのだろうと思う。
クイズ番組と絡めた半生の語られ方がとてもスリリングで目が離せず中弛みがない。ライフラインの使われ方もドラマを盛り上げる。一途で実直なジャマールがきちんと神様のご加護で運命を叶えるさまは爽快感がある。
一方でサリームの行動も見方によっては弟を思ってのこととの解釈も出来る。悪事を働く前に懺悔をしてもいるし最後は弟のために自分が犠牲になる。生きる為には仕方なかった選択をし続けた末路がとても悲しいが、だからこそこの作品に深みを与えているように思う。
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