emily

消えたシモン・ヴェルネールのemilyのレビュー・感想・評価

3.7
パリ郊外、ジェレミーの誕生日パーティの最中一つの死体が発見される。その死体はいったい誰なのか?2週間前シモンが行方不明になり、それに続いてレティシアもいなくなり、翌日にはジャン=バティストまで行方不明になる。事件の真相とは・・・

 ジェレミーにはじまり、生徒たちそれぞれの視点で描かれていく。最後には今が進み事件の真相にたどり着くオーソドックスな学園ものサスペンス。同じエピソードもそれぞれの視点が変われば、見えなかった部分が徐々に明らかになっていく。最後にはシモンの視点で描かれ、すべてがあっけなく見えてくる。ジェレミーに大きくスポットが当たっていながら、事件の事を一番知らない(骨折していたため)ので、見事に観客を誤誘導してくる。一つずつのエピソードがしっかり疑惑を埋め込み、噂の物証を切り貼りし、3人の失踪を大きな物へと見せていく。

 それぞれの視点で客観的に描かれているようで、やはりそこにはそれぞれの主観が入っている。目に見える物がすべてではないということを改めて思い知る事になる。彼らが観たものより見なかった物の方が大事であること。見た物、見間違えたもの、そこから構内に広がる噂の早さ。これは”何か”がある・・シモンと先生の関係の怪しさも常に漂わせ、開けてみると真相は全く関係ないところにあるのだ。

 見ているもの、聞いているものにより見事に真相が塗り替えられたあっけないラストは皮肉に光り輝く。そこに見えてる物は真実なのか?それは自分が勝手に理解し解釈した真実ではないのか?それを言葉にすることで、より”真実”感を高めただけではないのか?いつだって見えない部分に真実は隠れている。言葉を自分の目を信じずしっかり見るべきものを見なければならない。
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