ぽん

仮面/ペルソナのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

実験的というか現代アートの映像作品みたいなシーンが随所に出てきて噛み応えアリ。観た人それぞれに色んな解釈ができそう。

一応、緘黙症の女優と若い看護師の物語にはなっているが、ストーリーは副次的に見ておけばいいかなという感じ。それよりはセリフを噛みしめ、2人の女優の表情や2人が一つに溶け合うかのように巧妙に演出されたシーンを味わったりする方がこの作品を楽しめる気がする。

この映画、大人の男性が一人も出てこない。女優のダンナだけちょこっと出てくるけど、あれは女優の幻想っぽい。
そこではダンナは看護師のことを妻と思って話しかけ抱きしめる。それをシラーっと睥睨している女優。看護師はダンナに「母であることの苦しさ」を吐露。女優は彼女に自分の気持ちを仮託して言わせている。

看護師は堕胎した過去が、女優は子を持ったことが、自らを苦しめている。母性ゆえの罪悪感と、母性の欠如ゆえの罪悪感。
なんかもう圧倒的に女であることで苦しんでる感じ。
妊娠も出産も男がいなきゃ出来ないのに男の存在感ゼロの不思議。(彼らはセリフでしか出てこない)
原因の一端を荷ってるのに責任ゼロで良しとされてる物語を、案外フツーに観ちゃってる自分もこういう世の中に慣らされてしまっている。(ここ掘り下げると面倒臭いのでこのまま振り逃げ)

手のひらに釘を打ち付けるインサートカットが印象的だ。言わずもがなだけどイエス・キリストの磔刑を想像させて人の世の罪を思う。ところがそれに対して神の救済なんてことはトーゼン、ベルイマン先生が仰るはずもなく言葉を発することを頑なに拒否していた女優に、最後の最後に「無」という一言を言わせてこの映画は終わる。なんという虚無感。

そして冒頭とラストに映写機のフィルム。映画もまた人生のごとし。幻のような虚しいひとときかもしれないけど、この一瞬の輝きに幸福が宿っているのだと思いたい。
ぽん

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