このレビューはネタバレを含みます
(2020.5.5)
シアター・イメージフォーラムさん江 ¥3000
https://motion-gallery.net/projects/minitheateraid
【ネタバレあり】
舞台はマレーシアですが、20代後半をシンガポールで過ごした私にはこの作品の空気感がリアル過ぎました。
多民族な感じ。中国系、マレー系、インド系。2000年前後は人種による職業格差が大きく、周りのマレー系の人たちは郵便物の仕分けや運転手、住み込みのお手伝いさんなどの単純労働に従事している人が多かったです。今でもそう変わらないのではないだろうか?
店先で肉を捌いている安食堂のプラスチック椅子や天井で回るファン。日中に突然降り出すスコール。アジアン英語独特のイントネーション。
マレーシアの町並みは、ゴルフ遠征の時に何度も車で通ったそのままの景色のような気がします。
恋人とかではありませんが、あのような雰囲気のファストフード店で現地女性と話をしたりした記憶も。アジア系のジェイソンがまさに私の立ち位置。当時の自分の感情と色々とオーバーラップするものがありました。
*****
細い目ってそのまんまの意味だったんですね。欧米系の人が使うと差別的に取られたりするけど、この作品ではマレー系女子から見た中国人男性への憧れのようなニュアンスでした。金城武には似てないけど。
ギャングのボスの沸点低っ!(笑) あの程度のおふざけで殺された日には命がいくつあっても足りません。
ヒロインのオーキット、最初は正直ルックスが微妙だなと思ったのですが、作品世界に没頭するにつれて本当に可愛く思われてきて不思議。
「あの男はお前にふさわしくない」
世の父親がこれまでに何度も口にしたであろうセリフ。これまでもそういうものを乗り越えてきたであろう恋人たちの出会いが数えきれないほどあったであろうと思うととても感慨深いものがありました。
それだけにラストでの唐突な事故死には納得できず。ギャングとの絡みがあった訳でもなく、ストーリーの中での脈絡が感じられませんでした。最後の会話の解釈は…彼の言うところの詩だとか神の声だとかを暗示するものなのだろうか。別カノの子供を堕ろしたことがオーキットとヨリを戻す文脈の中で語られていたのも少し違和感。
若い頃の多感な自分と向き合うような、心に残る映画でした。