たけのこ

君たちはどう生きるかのたけのこのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

地元のシネコンで70代の母と鑑賞。
母による一言レビュー:
「子供向けか大人向けか中途半端。宮崎駿の失敗作」

ナツコのビジュアルや存在感に、終始エロチックなものを感じました。思春期特有の未熟な性への憧憬のような。

テーマとして感じたのは、コテコテのエディプス・コンプレックスでした。男の子が母親を愛する余り父親を憎むやつ。ルークにとってのダースベイダーであり、カイロレンにとってのハンソロ。「父殺し」というのは少年の成長譚や冒険譚における普遍的なテーマなのだろうと思います。

母親と瓜二つのナツコの存在は、マヒトの母親そのもののように感じました。母親の純潔性を崇拝するが余り、自分の母親と父親が(ナツコと父親のキスシーンを盗み見る行為に象徴されるような)性的な関係であることを信じたくないがためにマヒトの中で生み出された存在。もう一方のヒミの存在は母親の純潔性そのもののように感じました。

それでマヒトと父親との関係に何らかの決着が示されたかというとそれはなく…。スクリーンがエンドロールに切り替わった瞬間「えっ!?(これで終わり!?)」という声を出してしまいました。架空の世界の話のようでありながら、全ては多感な少年の空想の中での出来事(≒夢オチ)と解釈できなくもない構成になっており、オープニングとエンディングだけが現実で、実際には映画の2時間何も起きていなかったと見れなくもない。

腑に落ちないのは、宮崎駿さんの年齢からしてこれが最後の作品であっても全然不思議ではないんですよね。私であれば自分の人生で一番伝えたかったテーマを選ぶと思うのですが、宮崎さんがこの映画で本当に伝えたかったのは何なのか?もしくは人に伝えるためでなく、「子供向け」でも「大人向け」でもない「自分向け」の映画を作っただけなのか?ラストの辺りでトトロ的なファンタジーの世界よりも、争いが絶えないような厳しい現実世界で生きて行け!というのはかなり分かり易いメッセージでしたが、それも小テーマに過ぎない感じだし。宮崎さんのことを詳しく知らないので、そもそもエディプス・コンプレックス的なものをお持ちなのか分からないのですが、ご本人の解説などが出ればぜひ拝見してみたいです。
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