ピッツア橋本

細い目のピッツア橋本のレビュー・感想・評価

細い目(2004年製作の映画)
4.2
"瞳の奥と眼差しの距離感"

『タレンタイム』を観てからのレビューです。
細い目=chinese eyesと訳すんですね〜。興味深い。

本作が同監督のデビュー作、タレンタイムが遺作なので、美しい蝶を観た後にそのサナギを観たような感覚に陥る。

本作はそこに90年代のあの殺伐さと曖昧さを併せ持った空気がじっとり出ていた気がする。

タレンタイムで出演してた大家族が配役チェンジして再共演していて、ロケ地もリユースし、シャッフル感、既視感が多々見受けられた。
きっとキャストもスタッフもこのヤスミン組でずっと映画を撮ってきたんだなあとしみじみ思う。

肝心のストーリーは舞台はマレーシア半島で、中国人の男子とマレーシア人の女の子があらゆる偏見や民族間の隔たりに翻弄されながら進んでいく青春ラブストーリー。に、ほんのりギャング要素の入った世界観。

ずっと日本語と英語の字幕が忙しく表示されるハイブリッドな言語のやり取りが独特。

ただ主人公の青年に純愛感よりもゲスさが際立ち(貧しくて複雑な生活環境ではあるのだけれど)、イマイチ感情移入出来なかった。

それでも少女側のファミリーの家族愛溢れるギャグとか、映画ネタをベースに自然に展開される会話のやり取りは魅力的で、ヤスミン監督しか思いつかないであろうポップさが随所で効いてる。
ただその分身内受けのような、ダレるようなところもある。
そこら辺は後のタレンタイムでかなりブラッシュアップされている。

ずっと男性監督かと思っていたら女性なんですねえー。オチとか全体的なセンチメンタルさがナヨナヨ系男性思考な気がしたので驚いた笑

自分にとってタレンタイムのプロトタイプ、という域からは出ない内容だけど、そもそものベースが高いので充分楽しめた。
ピッツア橋本

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