3104

鑑賞用男性の3104のレビュー・感想・評価

鑑賞用男性(1960年製作の映画)
3.7
サスペンスや推理モノのイメージが強い野村芳太郎だが、実はコメディでもその才覚を発揮していた!・・いや単に自分が知らなかっただけか。

今の時代、女性だけでなく男性もお洒落をしなくてはならない、着飾って自己主張をしなくてはー
そんな「鑑賞用男性論」を引っさげパリから帰国したデザイナー、芦谷理麻を中心に巻き起こるドタバタそしてラブコメディ。

とにかく有馬稲子である。
撮影時に実際に洋行帰りだった彼女自身を思わせるような理麻の設定。歌って踊れる彼女の経歴を活かしたシーン。華奢でありながら肉感がある彼女の体型も引き立つような色とりどりの華やかな衣装。そしてファッションという狂騒を皮肉りながらもきっちりコメディエンヌをこなす演技力。
当時28歳と、言ってみれば美貌やキャリアのピークにあったであろう彼女の姿が存分に堪能できる作品である。

彼女以外のキャストも豪華かつ魅力的。
相手役の杉浦直樹。その兄に仲谷昇。彼女の家族に細川ちか子や十朱久雄。他にチョイ役で三井弘次や左卜全(チョイ役でも持っていく)、「本人」役で桑野みゆき、カメオ的な津川雅彦や川津祐介・・等々。
杉浦・仲谷兄弟の好対照な演技がいいバランス、そして有馬の恋敵のようなポジションの芳村真理の存在も光る。

こちらに向かって語り掛けるくだりや矢継ぎ早に繰り出されるギャグシーン、コロコロ切り替わる場面など、どこかテレビ的、バラエティ的な要素が特徴的。かのようにテンポよく進み、終始そのノリでうまく笑いを挟みながら行くのかと思いきや、後半になるとやにわにスローダウン。有馬と杉浦の恋を巡るメロウな展開といえば聞こえはいいが、急に湿度が増してしまい足取りがもたつくのが何とも残念。

ラブコメの「ラブ」の部分はベタな作り。互いが互いをある程度は意識しているのだが性格や立場などの理由から素直になれず、それでも仲良くなりかけるも些細な出来事でぶつかり、しかし何かのきっかけ~多くは外からの“押し”~により最後は結ばれてメデタシメデタシ・・という、王道ここに極まれりというハッピーな展開である。
3104

3104