ノルシュテイン傑作選⑥
約30分あるものの、ストーリーは監督の幼少期の体験がベースというだけあって、記憶の断片的な作品。
家族、赤ん坊、戦争、オオカミ、ウシ、子どもたち、りんご、カラス…
どの部分も夢と現実の区別がないような世界。
壊れたレコードのように音が飛んでタンゴの旋律が歪み、ダンスホールから消えていく男性。戦争へ行ってしまった。
車や池の描写に実写合成があったり、降り積もる雪の冷たさ、燃える炎の暖かさを感じる表現がとても素晴らしい。
ポツンと取り残されて、赤ん坊の面倒をみるオオカミをそっと抱きしめてあげたくなる。
ピアノの音色、鉄道の走る音、繰り返されるタンゴ。
ノルシュテイン傑作選のトリを飾るに相応しい藝術作品でした。