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ありふれた事件のKtoのレビュー・感想・評価

ありふれた事件(1992年製作の映画)
4.8
傑作だと思う.

POV&モキュメンタル形式, 殺人鬼ブノワを撮影しつづけるドキュメンタリー映画, という設定の映画. 何故,彼らがブノワを撮影してるのか目的は全く明かされないまま, ブノワを延々を眺め続けるような映画.

撮影側の倫理観を参照する隙もなくカメラの前で容赦無く人殺しを続けるブノワ, 謎の知性とカリスマ性に満ちた男だった.

海に沈めた死体が浮かんでこない為の重しに関する蘊蓄を喋り続けたり, 氷砂糖を子供の死体に見立てて一番最初に死体が浮かんで来た人が負けという"グレゴリー坊や"ゲームをしたり... サイコパスのレベルが違う.
鑑賞中の不快感, 現実感を"ファニーゲーム"っぽさ(もちろんこちらが先だが)として語っているレビューが多いのも納得. BGMやその他特別な演出もなく, 悪い意味でサラっと殺人が起きる感じは非常に似てた.

これだけ人を殺すのに, 鎖を無くしただけで焦る所とか凄くタランティーノっぽいなと思った(タランティーノはこの映画に影響を受けたと公言している). "人殺し"と"物をなくす"という全く重さの違う2つの事を, 同じくらいの重さで語るっていうブラックジョークが.

ふざけた拍子に友人を射殺するシーンは本当に秀逸, 友人が目の前で急に殺されて顔に血しぶきを浴びているのに, 何事もなかったかのように振る舞う人たち. 実際にこういう場にいたら, 瞬時に頭を巡らせてもそれが最善の行動だと思ってしまう. どうみても悪いジョークなのにジョークだと言い切れないのが怖い.
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