Uえい

バリエラのUえいのレビュー・感想・評価

バリエラ(1966年製作の映画)
3.0
生スコリモフスキを一目見たく映画館へ。

本作はポーランド時代の初期作品の一つだ。ポーランドで有名なドキュメンタリー作家カジミェシュ・カラバーシュの劇映画のシナリオとして執筆していたが、撮影が始まるとうまく撮れないとクレームがあり、急遽スコリモフスキ自身で監督することになったとの事。

医学生のある青年が、学校を辞めて街へ出る決意をする。寮の同室に住む同級生と、奨学金を共同の貯金箱に入れており、誰が貰うかのゲームをしているシーンから始まる。人体模型が持つマッチ箱を、手を使わずに口だけで取れたら勝ちという謎すぎる勝負だ。少ない期間で撮影されていて、このシーンも即興的に撮られている。

その後、青年は骨董品の販売を手伝うことになり、サーベルの売り方を考えることになる。そして路面電車の運転手の女性に恋をして、映画は女性視点に切り替わる。青年が何処かへ行ってしまい、青年を探すが、名前なども聞いていなかったため途方に暮れる。そんな中、仕事で路面電車を走らせると目の前に青年がいた。

「早春」を思い出すような純粋な青年と女性の出会いが描かれているが、一度離れ離れになるのが特徴的だった。そして、青年はサーベルを携帯していたり、鞄に爆弾が入っていたり、新聞を兜のように被ってみたり、奇抜なモチーフが使われている所がスコリモフスキっぽかった。

なんと言っても音の使い方が凄かった。本作の音楽はジャズピアニストのクシシュトフ・コメダに依頼して、時にピアノの中に消しゴムを落としてランダムな音を鳴らすなど独創的な作り方をしたらしい。音は登場人物の内面を表したとの事。

だからなのか、ドアを閉める音など、普通は音が鳴る箇所が無音だったりする。その代わり、レストランのシーンでフォークを叩くと、音叉のように現実ではあり得ない音が共鳴するなど、リアリティーは無視されている。また、電球が割れる音など、爆発音が所々使われているシーンなどが印象的だった。

効果音だけでなく音楽も勿論良い。二人が雪の中煙草を吸うシーンは忘れられない。
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