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バットマン フォーエヴァーのblacknessfallのレビュー・感想・評価

3.5
ティム・バートン版バットマンに熱狂した人達にはえらく評判の悪いジョエル・シュマッカー監督バットマンの1作目。

ティム・バートン版に熱狂した人達とか他人事みたいに書いたけど、おれもその1人なんでこれ観た時は少なからずガッカリしたよね笑

一応、バートン版のダークな世界観、ブルース・ウェインの悩み病める主人公像は辛うじてキープしてた。でも、そんなものが消し飛んでしまうぐらいこの映画は陽性で軽くてポップ。
悪役のトゥーフェイスとリドラーは"バッドマン・リターンズ"のペンギンやキャットウーマンにあった自分の運命を呪い世界に対するどす黒い復讐心なぞ微塵もなく、主人公を目の敵にするルーティンな悪に過ぎず、あまりに分かりやすく浅い。こんなのただのマンガじゃねえかー!とブチキレたよ笑

まあ、でもよく考えたら原作はただのマンガなわけで、観たことはないけどテレビ・シリーズのバットマンはお気楽でノーテンキなノリだったらしい。
だからシュマッカーはそっちに寄せたアプローチをしたと言える。

テレビ・シリーズが大人気だったように、このバットマン・フォーエバーも興行収入はバートン版の2作を上回ったらしい。
ヘヴィな情念や哲学的でダークなものよりスパッと分かりやすくライト快活なものをバットマンに求めている人の方が多かったってことだと思う。

今観るとそれも納得できる。出来がいいんだよな、これはこれで。
まず、バートン版よりテンポがタイトだし出てくる悪役のチープでハイテンションでコミカルな演技も笑えて楽しい。特にリドラー役のジム・キャリーのふざけてウザい演技はアクショナルなギャグ芸人のようなおかしさがあってサイコー笑 衣装のせいもあってカラフルなモジモジくんに見えた笑

分かりやすい悪巧みにサイコだけどキッチュでユーモラスな悪役。ノリとしては"ヤッターマン"みたいな感じ。
それにヒロインとのベタな恋愛劇に相棒ロビンの誕生までサイドストーリーも盛り沢山。
ヒーロー活劇としてはパーフェクトなんだよ!

でも、じゃあ、完全にウェルメイドなだけの映画かと言うとそうでもない。バートンほどではないにしろシュマッカーもしっかり自分の作家性を刻みこんでる。
何故か乳首が浮き出るバットマンスーツ、ロビンの股間が妙に強調された衣装、バットマンのヒップのアップ、要するにゲイであるシュマッカーのフェチズムが散りばめられている。
バットマンとロビンのコンビの誕生までのストーリーもどこかBLっぽさが漂う。
全方位にコントロールされた今のマーベルやDCでは観れない映画的な歪みがあるのも時代性を感じてよかった笑

バートンとの比較を頭から叩き出して観ると、しっかりと楽しませるヒーロー映画であることが分かる。
これはおもしろい!

でも、やはり、おれはバートン版、特にバットマン・リターンズが好きだ!正義と悪のストーリーではなく世界に捨てられた男(ペンギン)の復讐心に囚われた男(バットマン)をダークサイドに堕とす激鬱哀切なストーリーが。
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