maro

カラーパープルのmaroのレビュー・感想・評価

カラーパープル(1985年製作の映画)
4.0
 ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★★☆

原作小説は未読。
とにかく重い内容に心が引き裂かれそうになる映画だった。

この作品で一番印象的だったのは、主人公のセリーを演じたウーピー・ゴールドバーグ。
『天使にラブ・ソングを…』(1992)に代表されるように、陽気でポップなイメージが強い分、その真逆な本作での役どころに衝撃を受けた。
父とされる男性に妊娠させられ、2人の子供を授かるも、父によって取り上げられて離れ離れに。
その後、セリーの妹であるネティを欲しがるミスター(ダニー・グローヴァー)に、妹の代わりに嫁がされ、ほぼメイドのような生活に。
妹は妹で父に狙われる日々から逃げ出し、セリーのもとにやって来るも、ミスターに手を出されそうになって拒絶した挙句、追い出されてしまう始末。
唯一自分を愛してくれた妹とも別れなければならなくなってしまったのだ。

時代としては1900年代初頭ってことで、黒人の社会的地位は今よりももっと低かったと思う。
でも、この映画は黒人が差別される話ではなく(そういうシーンもあるけど)、黒人同士の話で、女性の圧倒的な地位の低さをまざまざと見せつけてくる内容なのだ。
セリーに限らず、ほとんどの女性は自由がなく、現代なら「それぐらい自分でやれよ」と言いたくなる男性の身のまわりの世話もすべて受け持っている。
今風に言えば、モラハラ・パワハラ・セクハラの三重苦である。
そんな状況の中、愛する人たちと引き離され、抑圧され、寡黙に生きる女性を演じたのがウーピー・ゴールドバーグ。
これまでの役とは全然違うよね。

ところが、たくましいんだ、セリーは。
今だったらそんな生活に嫌気がさして、病むか最悪自ら命を絶ってしまう人もいるかもわからないけど、セリーは懸命に粛々と生きていく。
女性の立場が弱いのは彼女に限ったことではなくて他の人もそうだったから、「自分だけじゃない」という環境が、そこまで彼女を追い詰めなかったのかな、、、と思わなくもないけど。
ただ、ミスターの髭剃りをする中で、「ここでこいつを殺せば……」という想いがよぎるシーンがあるから、心の中ではミスターに対する恨みが募っていることがわかる。

そんな不自由さしかない日々の中で彼女の運命を変えてくれたのが、シャグ(マーガレット・エイヴリー )である。
歌手である彼女は自由かつ豪快。
そんなシャグに憧れに似た感情を持つセリーと、セリーの中に美しさを見出すシャグ。
いつしか2人は友情を超えた絆で結ばれる。
シャグの影響もあって、セリーはついにミスターのもとを離れることを決意。
終盤におけるセリーの旅立ちから感動のエンディングまでの怒涛の展開は夢中で見入ってしまう。

あと、この映画は1985年に公開されているので、今や大御所となった役者たちの若かりし姿を見れるのもエモい。
中でも、ソフィアを演じたオプラ・ウィンフリーと、スウェインを演じたローレンス・フィッシュバーンには驚いた。
オプラって司会者なかったっけ?(笑)
また、スウィークを演じたレイ・ドーン・チョンは、後にあのクリス・プラットを見出した人物っていうのも驚きのポイント。

そんなわけで、全体的に暗い話ではあるんだけど、辛い日々の中で腐ることなく生き続け、最後には自由を勝ち取ったセリーの強さに勇気づけられる映画だった。
決してあきらめないこと、そして、居心地が悪かったら自分から動くこと、この2つが大事だね。
maro

maro