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街のあかりのいののレビュー・感想・評価

街のあかり(2006年製作の映画)
3.8
また読み違いや思い込みかもしれないけれど、これまでのカウリスマキ作品とは随分違うテイストだと感じる。〝敗者三部作〟の最後の作品は、カウリスマキ作品群のなかで異彩を放っていると思う。これまでは主要な登場人物のなかで、主人公を故意に貶めるような人物は出てこなかったのに、今作では主人公を何度も裏切る人物が登場する。そんななかでも「希望を持っている」と語る主人公はさすがだけど、そんな主人公に更に追い打ちを掛ける悲劇が起こる。主人公は、見捨てられた子犬のような目で何度も画面越しに訴えかけてくる。これまでの作品にあったユーモアはかなり控えめ。


この作品を制作したとき、監督は相当に世の中に対して怒っていたのでは?と私は想像する。それでも、とことん打ちのめされる主人公に対して、最後の最後に示されるのは、世の中に怒り心頭のただなかにいた監督がやっぱり手放さなかった希望なのだと思う。怒りながらもどうしても監督は希望を手放すことができなかったのかもしれない。それこそが映画のなかで自分のできることだと信じて。鑑賞後、心の中で反芻していてそのことに思い当たったとき、心が激しく揺さぶられた。
 


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・『浮き雲』に出演していためちゃくちゃ背の高い人が今作でも登場

・カティ・オウティネンさんはレジ係でちょっと出演
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