子持ちのカイロレン

日本侠客伝 白刃の盃の子持ちのカイロレンのレビュー・感想・評価

日本侠客伝 白刃の盃(1967年製作の映画)
3.5
 舞台を大正から昭和に移したシリーズ第六作。藤純子が忙しすぎて撮影日数が一日しかなく、急遽病院で寝たきりの設定にしたり、バタバタの舞台裏だっただろうが鈴木則文と中島貞夫の脚本とマキノ監督の流れるような演出で安定の仕上がり。白眉は伴淳三郎と松尾嘉代。
 伴淳三郎はかなり自由にやらせてもらえたんだろう。老侠客を伸び伸びと演じている。こんな何もしなくても面白い人の素質を抑え込むのはそもそも無理で、「飢餓海峡」での内田吐夢監督はスパルタで抑え込んだそうだがその反動がここにきて爆発。やりたい放題。松尾和子と勘違いしてキャスティングされたという松尾嘉代は結果的にそれが功を奏し、藤純子に勝るとも劣らない美しい動きでマキノ監督の期待に応えている。
 とても失礼な話、このシリーズ、脇のエピソードや俳優たちが皆素晴らしく、どうもメインの健さんに前のめりになれなかったんだけど、今作の健さんの、殴られても手を出さずに歯を食いしばる場面でようやく自分にとっての健さん劇場が開幕した。次作以降も何かが変わった気がするんだよなぁ。