たお

ナイト・オン・ザ・プラネットのたおのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

世界五都市での、タクシードライバーと乗客の人間模様を描くオムニバス作品。

ロサンゼルスでは、ガムをくっちゃくちゃ噛みながらタバコを爆吸いする美少女ドライバーのコーキー。他の車に「免許を取り直しやがれ!」と叫ぶやんちゃっぷりがかわいい。
彼女は客に女優にスカウトされても、整備工になりたいからと断る。
彼女には、自分の「プラン通りに生きること」が一番大事だと心から分かっているようだった。映画に出なくても、彼女はずっと主人公なのだろう。

ニューヨークでは、ど下手ドライバーで道はおろかDもPも分からないヘルムート。彼に代わって乗客ヨーヨーが代わりにタクシーを運転し自宅へ向かう。
黒人だからか、全くタクシーを拾えずに難儀していたヨーヨー。ドイツ移民で英語ができないヘルムートも、同じような不自由を体験している同士である。だがヨーヨーはあまりにも陽気でおせっかいで、ヘルムートも天然で、そういった悲壮感を感じさせない。
ヘルムートの「金は必要だけど重要じゃない」の言葉が良かった。彼は、そういった即物的なものよりも、ただ楽しい道化として生きているのだろう。

ヘルシンキでは、酔っ払い三人を乗せる真面目そうなドライバー、ミカ。
一番へべれけなアキの不幸話を聞き、自分の身の不幸を語る。アキは確かに不幸だけど、家族もいて、一緒に飲んだくれてくれる友人がいて、挨拶してくれる近所の人もいる。
自分が人と比べてどれだけ不幸か、ということが重要なのではなく、自分が持っている幸福に目を向けることが大切である。
幼い娘を亡くしたミカは不幸だったが、奥さんと幸福な日々を送ってくれることを切に願いたくなる。

タクシーの中という束の間の邂逅でいろんな人の人生が交錯する。
流れる街並みは全て異なっているけど、どこの街でも人間はその人らしく、普通の日々を過ごしている、ということが生き生きと描かれている映画である。個人的には3回目の鑑賞だが飽きない。
たお

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