たお

ヘレディタリー/継承のたおのネタバレレビュー・内容・結末

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

まず、主人公の予想が悉く裏切られる。
不可思議な雰囲気を纏った少女チャーリーが物語のキーパーソンだろうと鑑賞者は予想するが、彼女は序盤で事故死してしまう。その後彼女を死なせてしまったピーターの懊悩が痛ましく描かれているが、彼もまた呪いの力の餌食になってしまう。
では母の視点に寄り添えるかというと、彼女は夢遊病を持っているため、そもそもその言動が現実か夢なのかが釈然としない。
加えて、情緒の振り幅が大きく、その言動の真意も分からない。
序盤からずっと鑑賞者はどこに視点を置いて良いのか分からず、お化け屋敷の暗闇のなかで、思わぬ方向からおどかされるような気分にさせられる。

しかし、これはただの安易なビックリ箱とはならない。悪魔崇拝集団が鍵となることが示唆されていくからだ。
歴史上確かに存在しており、かつ何をするか分からないという大前提がある悪魔崇拝は、極めて現実味がある存在だ。ジョーン、そして祖母が種を蒔いていたことが徐々に明らかになっていく巧妙さがある。


グラハム家は、祖母の時代から悪魔崇拝の礎が脈々と継承されていたようだが、これは例えば虐待されていた子供は後に自分の子供を虐待するとか、そういった逃れられない血脈と慣習の連鎖を示唆しているように感じられた。
しかしその負の連鎖のなかで、近親の誰か個人のパーソナリティを責めることは辛い。
悪魔崇拝という絶対的な悪の存在を置くことで、それに翻弄された哀れな一家という図式を作られる。
ある一定の人にとっては、自らの境遇を救済できる希望のような作品なのかもしれない。
たお

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