たお

ブレッドウィナー/生きのびるためにのたおのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

タリバンの支配下のカブールで暮らす家族の話。
女性はあらゆる面において厳しく抑圧され、教育や就労もできなければ、音楽や物語や写真なども全て禁止されている。
さらに女性だけで外出も禁止。
タリバンの兵士は街中で規則に違反した市民を見つけると、問答無用で暴力をふるう。

そのため、主人公パヴァーナは、豊かな長い髪を切り、家族のため男のふりをして働く。
男の格好をした途端、どこへでも行けて、買い物もできて、労働もできる、という開放感に包まれるのが悲しい。

彼女は物語を作ることが上手で、小さい弟をなだめるときや、友人を励まし癒すときに、生き生きとおはなしを語る。
それは寓話的なタッチの切り絵アニメーションで表現され、鑑賞者にも一抹の逃避と陶酔を与えてくれる。
物語の主人公の名前は、パヴァーナの亡き兄の名前・スリマンだ。
クライマックスで象の王に立ち向かうとき、スリマンもまた物語を語ろうとするが、それはあまりに短い。
自己紹介と家族の紹介と、「おもちゃを拾ったら、爆発した」。それだけである。
パヴァーナの創作の中で、兄はいろんなところに旅をして、勇猛果敢に怪物に立ち向かうが、それでも唐突に幕を閉じてしまった兄の人生は変えようが無い。


現在、タリバン政権がアフガニスタン全土を侵攻しているが、それが何を意味するかが痛烈に伝わってきた。
女性の権利は奪われ、暴力が横行し、犠牲になるのはただの市民だ。
いま観るべき作品のひとつであるとおもう。
たお

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