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刑事キャレラ/10+1の追撃のHKのレビュー・感想・評価

刑事キャレラ/10+1の追撃(1972年製作の映画)
3.5
このパケ写もう少しなんとか・・・
約50年にわたり50冊以上が刊行されたエド・マクベインの人気警察小説 “87分署シリーズ”の17作目『10プラス1』の映画化作品です。
といっても舞台が殺伐としたニューヨークから風光明媚な南仏のニースに移ったため原作のイメージとはかけ離れており、ミステリー風味のフレンチ・ノワールというか不思議な作品になってます。

ジャン・ルイ・トランティニャン(当時42歳)扮する主人公のキャレラも原作の愛妻家キャラとは違い独身の変人ですからもう割り切りが肝心。
原題は原作を意識した邦題とは全く違う “Sans Mobile Apparent”(明白な動機ナシ)。

謎の連続狙撃事件に挑むキャレラ刑事たちの捜査風景が独特なテンポで描かれますが、昔読んだハズの原作も全く思い出せず、見終わっても何が10+1なのかわからない・・・

監督はJ・P・ベルモンドの『相続人』や『危険を買う男』のフィリップ・ラブロ。
音楽はエンニオ・モリコーネで間違いなくモリコーネサウンドなんですがいまひとつインパクトには欠ける印象。

女優陣が割と豪華で、『暗殺の森』でもトランティニャンと共演したドミニク・サンダ(当時24歳)、まだ清楚(?)なラウラ・アントネッリ(当時30歳)、キツ目の顔が印象的なカルラ・グラヴィナ(当時30歳)など若かりし日の懐かしき人たち。

映画の冒頭ではレイモンド・チャンドラーが引用されますが、ラブロ監督が好きなんでしょうか。主人公のキャラはフィリップ・マーロウとは全く重なりませんが、いきなりS&Wをぶっ放す様はそれはそれでカッコイイ。

邦題に同じくキャレラを冠した作品『刑事キャレラ/血の絆』(1977)がありますがこちらは未見。クロード・シャブロル監督でキャレラ役はドナルド・サザーランドらしく、デビッド・ヘミングスやドナルド・プレゼンスが共演しておりちょっと気になります。

また、原作者のマクベイン脚本でキャレラ役をバート・レイノルズ、トム・スケリットやラクウェル・ウェルチ、ユル・ブリンナーらが出演した『複数犯罪』(1972)が原作の雰囲気にも近く面白かった気がするんですが、なんせ40年以上前にTVで観た記憶なんであまりあてになりません。もう一度観て確かめたいのにどちらも現在見る術が無いようで残念です。

邦画では黒澤明『天国と地獄』、市川崑『幸福』などの原作が“87分署シリーズ”でした。
ちなみにヒチコックの『鳥』の脚本エバン・ハンターもマクベインの別ペンネームですね。
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