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ドント・ルック・バックのshibamikeのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・バック(1967年製作の映画)
4.0
自分はこの映画が客席から「ユダ!」と罵られる映画と思って見ていたが、違っていた。バンド演奏を本格的に取り入れる前のディランの映画である。

やはり、当時は音楽に対しての国民の熱が凄いと思う。会場の外で出待ちして、「彼、ハンサムよ!キャー!」と騒いでいる小娘がディランのいる楽屋に案内されたと思ったら、「あなたの歌、最高よ!でも、サブタレニアンは苦手…ふざけてるみたい」とな!面と向かってよく言えたもんだぜ、お嬢ちゃん。しかし、このことからも分かるように多くのファンはディランに「フォークの貴公子」を求めているのだなと。チャラチャラしたバンド演奏なんて低俗なやつらにやらせておけ、と。フォークこそ人生の深遠な精神を歌っている唯一の音楽だと。周りがそんなヤツばっかりだったら息苦しそう。

確かに若い頃のディランはルックスが良い。
そして、ニヒルな感じで薄ら笑いを浮かべているような。だから、人を小馬鹿にしてんじゃないの、この人は!とか思ったりもしたが、いくつか観られるインタビューシーンでは口角泡を飛ばす勢いでしゃべるしゃべるしゃべる!
ディランって若い頃はこんなに多弁だったのね。昨今のノーベル賞受賞の雲隠れも人生色々あってああいうディランになったのね、と切ない気持ちに。
それにしても、TIME誌の記者とのインタビューの際、自分も正直、一瞬記者同様に「ん?」となったときがあったが、そこは世間の矢面に一人で立つ孤高の天才が言うことですから、凡人の自分らは大人しくうなずいておくのが吉だなと反省しました。

暗いステージにてライトを一人向けられ、鋭い目付き、小気味良いギターフレーズ、難解な歌詞、独特なボーカル。そりゃ、反則級のカッコ良さである。世の中に「俺には、私には、彼(ディラン)の歌っている歌詞の意味が分かる!深いのよ~、あの歌は。」と中2病リスナーをさんざん量産したのでは。

演奏中、訳詞が出ており有り難かった。難解な歌詞の中にもハッとさせるような鋭いフレーズ達がきらめく。
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