Fitzcarraldo

喜劇 各駅停車のFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

喜劇 各駅停車(1965年製作の映画)
2.2
現役の国鉄の機関士として働きながら、1963年に『機関士ナポレオンの退職』を発表すると芥川賞にノミネート。僅差で受賞を逃すも翌年にはTVドラマ化もされた清水寥人(リョウジン)の同名小説を『喜劇 各駅停車』として松竹ヌーヴェルヴァーグの先駆けとされた井上和男監督による映画化。

脚色には高峰秀子の旦那であり、脚本家であり、映画監督である松山善三が担当。

なぜタイトルを変更して喜劇を入れたのか…映画の内容からしても『機関士ナポレオンの退職』の方が腑に落ちる。喜劇と銘打っといて笑うところが1つもないとうのは如何なものか…森繁久彌と三木のり平のキャスティングを呼び水にしたかのようなタイトル…


ナポレオン機関士の後任て赴任してきた南利明演じる大田。機関助手の丸山を演じる三木のり平。

居酒屋の女将キミを演じる岡田茉莉子の店で飲む二人。

大田
「おい!お酒ちょうだい!」

睨むキミさん。

(この注文の仕方…ホントになんとかならんのかね…偉そうに横柄な発注する輩が今だに後を立たない…)

大田
「お酒まだかよ〜」

キミ
「お酒なんかありませんよ!」

大田
「ない?あるじゃないか!ここに!(カウンターの中の酒瓶を勝手に手に取る)」

(おいおい…帰れ!という警告が伝わらんのか?しかも勝手にカウンターの中の商品に触るんじゃねぇよ!無礼者め!ほんとに多いんだよなぁ…こういうバカどもが…しかもイエローカード出されてることにも気づかないという…で、逆ギレしてくるんだよね…あー恥ずかしい。自分が無粋なことをしてるって気づけボケ!これね、一緒に飲んでる友達とかもね、止めないどころか逆ギレに加勢してくるからね…終わってるわ!誰が教えたら矯正されますか?誰か教えてあげて!このシーン見て勉強して欲しいわ!)

キミ
「あんたに売るお酒なんかありません!」

(イエローカード2枚目!これで合わせてレッドカードです。退場して下さい!)

大田
「飲み屋だろ!ここは!」

(バカ!死ねよ!いい歳して、この道理が分からないなんて…酔って自覚ないのかもしれないけど、ホントにこういう輩多いからね。自粛して下さい)

キミ
「あんた!いつからこの機関区に来たか知らないけど…知ったかぶりはよした方がいいわよ!あたしはね、お酒を飲んで人の悪口言う奴は大っ嫌いさ!お勘定なんか要らないから、さっさと帰ってちょうだい!」

(ここまで言われないと分からないのかしらね…女将さんに言わせんなよ)

大田
「なんだぁこのババア!」

(おい子供かよ…やれやれ相手にするのもイヤんなっちゃうねぇ…)

キミ
「あんたにババアって言われる筋合いはないよ!なにさ、チクワみたいな顔して!帰ってちょうだい!」

大田
「誰がこんな飲み屋なんかにいるもんか!」

(はぁ…飲み屋あるある。これ50年も前から何も変わってないのか…いやんなっちゃうね)




○河原
37年間無遅刻無欠勤のナポレオンこと寺山を演じた森繁久彌と丸山が休憩。

寺山
「人間は孤独でなくちゃいかん。係累や財産があるとモノに執着する。欲が出る。妥協は人間の一番浅ましい姿だ」

これはいい台詞。


○機関運転室

寺山
「やればできるんだよ。できないやつは、やろうとしないだけだ。仕事は然り。恋愛も然り。男は伊達にブラブラ下げてるわけではない!」

個人的には好きな台詞だけど、現在ならジェンダー・ハラスメントに引っかかるんだろうな…




台風上陸で機関車が横転…国鉄の全面協力が凄い!こういうのはもう撮れないだろう…『新幹線大爆破』(1975)では国鉄に協力を断られてるし…


折角ここまで協力してもらったのに…映画としては全くハイライトになってないのが辛すぎる。なんのための横転だったのか…。台風で犠牲になった若手機関士と当番を替わってやればよかったと嘆く寺山…だが、すぐ次のカットでヤマメを取りに渓流へ。楽しそうに川へダイブする寺山。ん?…気持ちの変化が急すぎる…気持ちの流れは無視ですか…?

そして、ヤマメを持ってキミさんのところへ…すると息子が結婚するから金を貸してくれと言われ…ヤケ酒してるキミさん…では気晴らしへと温泉に。

あの〜台風なんだったんですか?犠牲になった若手の死は?なんにも意味なくなっちゃうけど…しかも三木のり平は、大惨事になって病人を担架で運んでる時も看護婦に見惚れて…横転までさせて、一体なにがしたかったのか?謎である。

原作にそういうシーンがあるのか読んでないから分からないが、こんなことになるなら、まるまるカットしてよかった。



○機関室

頬を蜂に刺された寺山。
蜂に刺されたらアンモニアがいいと、丸山に小便をご所望する寺山。タオルに小便をかけさせて、その小便タオルで頬を濡らす。

なにその療法?昔の間違った言い伝えというのは恐ろしいね。何も効果がないのに信じてやってしまうのだから…



○本部
退社の挨拶をする寺山。それを聞いてウルウルする部長…え?あんた辞めさせようとしてたやん!いつまでも辞めない寺山を疎ましく思ってたやん!なんなん?キャラがブレてんねん!


デート前にジンタンを飲み口臭改善を確認する丸山。何これ?!と調べてみると、日露戦争の最中1905年(明治38年)に「赤大粒仁丹」として世に出てから、銀粒仁丹と変化し現在までもロングセラーとなっている家庭薬らしい…知らなかった。

商品の特徴は…
●16種類の生薬が配合された口中清涼剤。
●生薬の力が、心と体に穏やかに作用します。
●気分のリフレッシュに、二日酔いなどの胸のむかつきや、口臭が気になる時などにぜひお試しください。

とある。
三木のり平に倣って試しにやってみよう。



○線路上
女にフラレて泥酔した挙げ句に線路に横たわり自殺しようとする丸山。37年間勤めた国鉄を辞めて、一升の酒を呑み、いい気分で線路を歩く寺山。
トンネルで出くわす2人。

『殺人の追憶』に似てるショットが多数。ただ心の移ろいや感情移入は全くしてないけど…
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