前作『希望のかなた』(2017)のプロモーション中に監督引退宣言をしたアキ・カウリスマキの最新作。
シネマカリテのお姉さんがディズニーランドの如く「いってらっしゃいませー」と元気よくモギリ(もうもぎることはないのだが…)で言ってくれて、なんだか嬉しい気持ちになる。
これから映画を見るのに…まるでジェットコースターに送り出す係員かのようで、とても新鮮で気分上々でのスタートとなる。
ケリー・ライカールトとの二本立てだったので、カウリスマキ演出が妙に過剰に感じてしまった。いつも通りのカウリスマキなんだけど…
ロシアによるウクライナ侵攻のニュースを何かにつけてラジオで流す。これもねぇ…ルー大柴のようなクドイ印象を受ける。映画に時代性というものは付き物なんだろうけど、余りにもそのままの表現すぎて…なんでだろう?これまで現実と地続きなリアルさを映画には求めてた気がするけど、現実そのものを切り取られても面白みがないというか、そのままだから…まぁそうだねぇ…というか…怒ってんだねぇカウリスマキは…許せないんだろうなぁ…と。その強い思いが監督引退宣言を撤回する原動力となったのは間違いないんだろうけど…。
なんかそれ以上のものが拾えなかった。
相変わらず赤色を用いているが…本作はどうも赤もクドイ。食傷気味になる。もう少しピンポイントで使えば効果的な気もするが…リリーフピッチャーを何回も使いまわしてるような印象…まだ投げるの?また赤なの?
小津安二郎の赤とはまるで違う。
「男なんて鋳型の型みたいなもの。そして全部壊れている」
このセリフが言い得て妙だなと。