こたつむり

息もできないのこたつむりのレビュー・感想・評価

息もできない(2008年製作の映画)
4.3
♪ 頭を冷やしなさい
  なんて何回言われてもわからない
  ふざけんじゃない バカヤロウ

多用すると軽くなる言葉ってありますよね。
特に「絶」が付く言葉は慎重に用いた方が良いです。「絶対」とか「絶望」とか。使えば使うほど、カサカサに乾いた絵の具のようになりますからね。

だから「絶句した」なんて使わない方が吉。
…なんですが、本作に限って言えば、この表現がピッタリ。積極果敢に「絶句した」と言いたいのです。

でも、それは鳩尾を殴られたから。
鈍く、強く、激しく。ズドンという音とともに内臓を突き破り、背中にまで広がる痛み。それはツラくて哀しくて赤色。指の先まで伝わる“生”の声。

思うに、生物が目指す場所は“赦し”。
食物連鎖の輪に留まれないのならば、どこかで目覚める必要があるのです。そして、そこから目を逸らせば、訪れるのは破滅。

まあ、そんなわけで。
暴力が暴力を生む世界(韓国)を描いた物語。
主人公の所業は共感できないので、確実に人を選ぶと思います。「こんな男、許せるはずがない」と感じるのも当然ですからね。

しかし、それは因果応報の炎に囚われた証左。
じわりと己の身をブスブスと焦がすことになりますので…出来ることならば、本作を“赦す”隙間を作っていただけたら…。

それに本作では“希望”も描かれますからね。
主人公の甥《ヒョンイン》を慈しむ眼差しに気付くことができれば…殺伐とした世界の行き着く先に光を感じることでしょう。たぶん、それが監督さん(=主人公)の“やさしさ”です。

余談その1。
批判を恐れずに言うならば、やはり日本と韓国は兄弟国だと思いました。どちらが兄で、どちらが弟で…と考えると揉める原因になりますが。本作でも日本のゲームやアニメが日常に馴染んでいました。

余談その2。
誰もが本作で韓国語をひとつ覚えます。それは「シーバーラーマー」。たぶん「バカヤロウ」とか「クソッタレ」的な意味ですが、これは日常生活で多用したらダメですね。シーバーラーマー。
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