とりさん

地下水道のとりさんのネタバレレビュー・内容・結末

地下水道(1956年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

一言、『絶望』で終わる映画です。
映画開始5分程の時点でキャストの死亡フラグが宣言される絶望感たら(ーー;
まぁ、ワルシャワ蜂起の地下水道の話だし、そりゃ絶望感しかないですよね。

素人なりの映画の背景にあったポーランド史の概要ですが・・・
昔からの緩衝国でまとまりつかないポーランドが戦争巻き込まれて、自由主義系のレジスタンスと共産主義系のレジスタンス、そしてユダヤ人のレジスタンスが出来ましたがお互い共闘は全くなし。
共産主義系のレジスタンスはあっさりソ連に付いて、自由主義系はドイツ叩くチャンスだからとワルシャワ峰起するもソ連の策略で兵糧攻め。
そして地下水道の流れへ・・・この映画、そんな四面楚歌の状態の絶望を描いています。(~_~;)

地上では危ういながらも均衡を保っていた中隊が地下水道に入り徐々に追い詰められバラバラになり、個人のエゴが露わになってくる様子が、国の危機に共闘もせず、我が身の保身を図るレジスタンス達への皮肉のように見えたのは私だけでしょうか。
市民を見殺しにし泣き叫ぶ老婆を殴り殺す兵士に、戦争の残酷さを感じながら、人間とは生悪な生き物なのかもしれないと考えさせられます。
ワイダ監督、ここら辺の人間心理描写がホント素晴らしいです。

この映画は戦争の残酷さと言うより、戦争は人間が起こすものだと言う事がテーマなんじゃないかと個人的には思っています。

さて・・・。
人間に対しての絶望感抜群ですが希望もありました。
デイジーです。
恋人のコラブには「君は現実的すぎて恋愛が出来ないだろう。」と酷評されますが、彼女の現実を直視しながらコラブに付き添い続ける愛の深さ。
せっかく出口に出られるのに、出られない彼を見捨てず彼に希望を与えたまま最期を見送った彼女の姿に、ポーランド女性の強さと不屈さを感じました。

人を愛する事は、お互いを許し合う事、現実を直視する事。
人の善はここにあるのでは。

そう言えば、彼女には死亡フラグ立ってなかったし。
デイジーが悲しみを乗り越え、未来に繋がっていて欲しい('-'。)
そんな希望を祈りつつ映画館を出るのでした。


ここまでご覧頂き、ありがとうございましたヾ(≧▽≦)ノ
とりさん

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