テレビでやってたので、クライマックスである漁船のシーンで、子供と二人で泣いちゃったりした。主人公の生き方が変わった瞬間。これぞドラマであり、映画というものの正しい姿である。キャラクターたちの動きも終始、楽しく愛らしく、吹き替えも子役たちは素晴らしい。大人は、特に主役のとんねるずは最悪だから字幕で観たほうがいい。彼はその後も声優として起用されないし、うまい声優がいっぱいいるのにおかしいことである。ついでに新作「Elemental」の宣伝があったけど、私が好きな川口春奈ちゃんのセリフも音程が平板で、残念ながら駄目だった。あんなの、見せないほうが映画を観に行く人が増えるんじゃ?日本語版の翻訳や演出が無能なのだから。
本作は、長女が小さかったころに初めて観たんだけど、ピクサーの水準としてはプロットの完成度が高いとは言えない。特に、サメの集団がベジタリアンみたいなのは、いまいち意味不明でノイズになった。まずストーリーの根幹が、嫁さんと卵を捕食者に食べられた男やもめの話なのだから、サメの役回りはそのままで良い。本当の魚なんてものは共食いだって普通にするし、同じ肉食のエイが先生をしてる段階でファンタジーではあるのだが、わざわざメタな設定を出して、そこを意識させる必要はない。ファンタジーの世界が醒めてしまう。ベジタリアンをあまり好意的に描かず、何なら馬鹿っぽい描き方自体は、「ノッティングヒルの恋人」にもあったモチーフだし個人的に嫌ではない。でもノイズだ。何を食べるのか、という問題は伏せたままにするのがリトル・マーメイドにせよ、カーズにせよ良策である。
この映画が、魚を水槽で飼うのは悪いことだという話になっちゃっているため、カクレクマノミを飼うのが流行ったら台無しだ、みたいな論調が当時はあった。これもまた、単細胞っていうか馬鹿な話ではあるのだが、たしかにストーリーが人間から逃げる話なんで、歯医者と同じことをするのは、映画を気に入ったことと矛盾する。だけど大好きなアイドルとか、フィギュアスケーターが結婚したら恐慌をきたす人もいる。あるキャラクターを愛していても、実在するその人の、生き物としての幸福を願うとは限らない。そういうケースと同じだろう。トイ・ストーリーの玩具と持ち主にも通じる話だ。
海水の水槽って、自分で飼ったことがないんだけど、魚は真水の排水溝の中って大丈夫なんかしら?
あ、あとドリーに対して苛つくっていう反応も日本には多かったと思う。これ、余裕がないマーリンのキャラクターがとても日本人的なんだな。外国人は、困っている人に対して日本人よりはるかに寛容である。日本人も外人には、親切だけど。