deenity

ミルクのdeenityのレビュー・感想・評価

ミルク(2008年製作の映画)
3.8
つい最近『永遠の僕たち』のガス・ヴァン・サント監督作品を鑑賞したばかりですが、それに引き続き2本目。
アカデミー賞では脚本賞を獲得し、同時に主演を務めたショーン・ペンが主演男優賞を受賞した作品でもあります。

ショーン・ペンが演じたのはハーヴィー・ミルクという実在の人物であり、自分は全然知りませんでしたが、1999年には「タイム誌が選ぶ20世紀の100人の英雄」に選出されている偉大な人みたいですね。
自らがゲイであることを公表し、その上で市会議員に当選した活動家であり、昨今ではよくLGBTQが取り上げられた作品なんかが作られますが、そういう土台を築いたミルクの伝記映画です。

今でこそ自由の国アメリカでは同性婚も認められているようですが、実際数十年前にはゲイの人なんかは当然虐げられてきた過去があるわけで、そういう生き辛い環境下でも屈せずに戦ってきた背景があるから今があるということは改めて実感させられます。

特に対立派の議員の主張なんかは今だと速攻炎上必至でしょうが、それが平然と掲げられ、何ならそれこそが多数派の意見であるという現実を目の当たりにしつつも当選していくミルクというわかりやすい作りが単純明快で良かったですね。

ただ本作がよかったのは、ゲイのみに焦点を当てているのではなく、社会的弱者全体に対しての後押しになるような作品になっている点ですね。
それこそゲイ限定の作品となると、もちろんメッセージ的には素晴らしいのですが、共感を得られる要素も少なくなってしまうわけで。その点さまざまな理由で虐げられるマイノリティ映画とすることで、多くの共感を呼ぶような、それこそミルクの意図するような人権をテーマにした映画になっていると思います。

どんなに風当たりの強い時代も、それに負けない人の意志の強さが現代の文化を築いていく。今当たり前のようにセクシャルマイノリティが問題になってる作品が作られていますが、今がまさに時代や文化の転換点であり、いつの時代か過去の悪しき風習と言われるような時代になってほしいと願っています。
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