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うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーのベイビーのレビュー・感想・評価

4.1
「うる星やつら」のテレビシリーズは観ていなかったのですが、押井守監督作品だということで、この作品を知ったのも随分前のこと。

初めて観た時の印象はとてもシュールで、僕がにわかに知っている「うる星やつら」とは、随分様子が違うものでした。

最初は肩透かしをくらった感じで戸惑ったりもするのですが、次第に押井守監督が奏でる独特な世界観に慣れはじめ、ついつい引き込まれてしまいます。

オープニングは、押井守監督作品の象徴とも言える"鳥"が飛ぶシーンから始まります。鳥のイメージとはなんでしょう? 自由、無垢、無邪気…

高い空から俯瞰で見つめる"鳥"の目は、物語を客観的に見つめる神の視点にもとれます。

冒頭から続く不条理、そして、謎、謎、謎…
時間という概念。"今"という概念。現実というものの概念。

不条理に歪められた様々な概念に悩まされる登場人物たち。その不条理を作り出す犯人は神の視点が導きます。

カメラアングル、カット割り、音楽… 様々な演出で表現されるこの世界観は、まさに押井ワールド。日本アニメの隠れた名作です。

板尾創路さんもこの作品が好きで「なんかたまに無性に観たくなる」とおっしゃっていました。それは、僕も同じです。無性にこの質感を確かめたくなる時が来るのです。

今のアニメーション技術を知れば、色褪せない作品とは言いづらいですが、しかしだからこそ味わえる独特な風合い。この世界観だけは、いつまでも色褪せない。まさに傑作だと思います。
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