ハター

ジョゼと虎と魚たちのハターのレビュー・感想・評価

ジョゼと虎と魚たち(2003年製作の映画)
4.0
なんと、美しくも悲しい物語だろうか。
雀荘のバイト、女遊び。極々ありがちな大学生活を送る青年は、ふとした事で出会った女性に己を奪われる。その人は身体障害を持った故に、まるっきり外と無縁な世界で生きていた。偽りのない純粋な想いが動き始める序章。ささやかながらも、もてなしの心がこもった料理は、直に感じるはずの温もりを視覚的に伝えてくる。2人の距離が縮まる過程は愛らしさもあり、何ともこそばゆい。
異なる世界を生きてきた互いはゆっくりと心を通わせ、次第に惹かれ合い、愛を確かめる。そして、やがて結末は訪れる。それは、いち視聴者として否定と肯定、両方の念に捉われざるを得ない。音楽も程々に、薄く色味がかかった背景が複雑に感受したそれを増幅する。

『小さいおうち』でもそうでしたが、妻夫木聡は若気ある大学生役がハマるなあ。軟派な所を匂わせながらも真っ当な雰囲気も備えているし。己の武器を発揮している俳優さんですね。脇役ながらも、新井浩文が演じた純粋で不器用なキャラクターもグッドです。
そして、特筆すべきはジョゼに扮した池脇千鶴。その破壊力たるや。雰囲気、容姿、演技、どれをとっても、それはまさに相応しい。ジョゼとして適役だったと言うべきか。はたまた、池脇千鶴がジョゼを作り上げたのか。
何にせよ、こうも思うほどの事実がなかなかに衝撃的であります。
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