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小人の饗宴のTSのレビュー・感想・評価

小人の饗宴(1970年製作の映画)
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【人間の縮図】
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監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
製作国:西ドイツ
ジャンル:?
収録時間:96分
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発掘良品第35弾。
これまた異様な作品だ。採点不能。全編小人症の人達がひたすら暴力や悪戯を繰り返す作品です。見ていて胸糞悪く、小人だから善人とかそういうものは皆無です。ストーリーもないに等しく、90分強、小人たちの悪戯をひたすら見せられるのは中々苦痛です。動物を殺す、自動車を破壊する、盲人を欺く、放火するなど、彼らを止める人達は誰もいませんので終盤までそれらの行為が終わることはありません。また、不気味な笑いを最初から最後まで聞かされるためある意味ホラーでもあります。評価が難しい作品です。後述する人間の根源を描いているとするならばパーフェクトですが、あまりにも異色すぎる。結果的にかなり胸糞悪いので高評価になるかと言えばそうでもないんですよね。。

さて、今作は小人がひたすら悪戯をする映画なのですが、恐ろしいことにこれらの行為は健常者も普通にやっています。いや、むしろこれらの行為は歴史的に見ても健常者が率先してやってきたものだと言えます。ヘルツォーク監督はそれらの行為を小人たちにさせることにより、客観的視野を獲得しようとしたのでしょう。これは差別的な試みかもしれませんが、健常者以外の方がこれらの事をやることにより、健常者たちは冷静に物事を判断出来るのだと思います。しかし、思い返すとこれらの行為は実は我々がやってきたものなのだと気づかされるのです。

つまり今作は人間の悪の根源を徹底的に描いています。ある意味人間というのは、高度な知恵を獲得してしまったが故に、このような邪悪な行為をいとも簡単にしてしまう、いわば「最悪の生物」と成り果ててしまいました。全生物で最も醜い生物は(無論自分も含めて)「人間」だと前々から僕は思っています。また、紛れもなく地球からすると人間こそが最大の菌であると思われます。種族の繁栄は、その種族に課せられた絶対的な使命であるため、そこに善悪はない気もしますが、地球上で人間が最も狡猾な生物ということには疑いの余地がなさそうです。

これらを小人の方にやらせること自体、何やら差別的な気がしますが、要するにこれらの行為は健常者の映し鏡であり、ある意味今作は健常者を皮肉った作品であると思えます。

ラストのラクダを見てひたすら嘲笑するシーンも極めて不気味です。自分よりさらに下位に位置する存在を目の当たりにした時、人間は嘲笑うことしか出来ないのでしょうか。恐ろしい。

全体的にいうと間違いなくカオスな映画です。発掘良品として出ていますが、果たして良品と言えるのか。「発掘問題作」の方がしっくり来る気もします。とにかく異様で不気味な映画です。生半可に見ない方がよろしいかと思います。

(今回、「健常者」という単語を使わせてもらいましたが、個人的にあまり好きな用語ではありません。漢字から推測するに、偏見に満ち溢れていると感じるからです。しかし、話を円滑に進めるために今回は使用させていただきました。その旨だけ最後に記載させていただきます。)
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