いまだに読み継がれるジョセフ・ヘラーによる戦争不条理小説をマイク・ニコルズ監督が映画化しました。小説『キャッチ=22』は英語で「不条理」の代名詞となっているくらい広く読まれています。英語圏では誰しも知ってて、一家言がある作品。しかも、言葉がメインで派手さはない。映画化には向いていない作品を名匠マイク・ニコルズ監督がどう料理するか...
描かれる不条理の中心にあるのはタイトルにもなっている「軍規22項(キャッチ=22)」です。ルールや会話がとても不条理なんです。主人公の爆撃手ヨッサリアン大尉(アラン・アーキン)は死にたくない。だから、爆撃機にのって飛びたくない。しかし、どれだけガンバッても「軍規22項」のせいで出撃を余儀なくされます。果てしてヨッサリアン大尉の運命は?という話です。
原作である小説を超えていません。映画なのに言葉で不条理を描いてしまっています。せっかく映像化するのだから、もっと言葉に頼らない映像的な表現も欲しい。これだったら小説を読んだ方がいいよ。これがこの映画を観た正直な感想です。
さらに主人公を演じるアラン・アーキンがあまりにもバカっぽくてイライラしてしまいます。ヨッサリアン大尉はこんなアホじゃないだろう……狂ってるけど、アホじゃない。
しかし、この映画の根本的な問題はテーマ性の薄さです。薄っぺらいんです。少なくとも小説版のテーマは「弁神論」だと思います。反戦が(少なくともメインの)テーマではないです。「完全なる神様が世界を作ったなら、こんなひどい世界にしたわけがない。だから神様は存在しない」という考え方。そのための不条理です。そもそも、戦争などという不条理はなぜ起きるのか?人間と神様の関係は?この映画には小説が持つテーマが薄いんですよ。
マイク・ニコルズ監督はグラミー賞、アカデミー賞、トニー賞、エミー賞の4賞受賞したすごい監督です。『バージニア・ウルフなんかこわくない』(1966年)と『卒業』(1967年)で名声を獲得して、満を侍してこの人気小説の映画化に挑戦したんだと思います。アメリカの大型爆撃機B-25ミッチェルが「これでもか!」と登場するのでお金もかかってると思います。でも、それだけ。